リウマチと自己免疫疾患のすべて
― 病気の特徴、種類、治療法、副作用まで詳しく解説 ―
1. 自己免疫疾患とは?
私たちの体には、「自分」と「異物(ウイルスや細菌など)」を見分け、異物を排除する「免疫システム」があります。しかし、このシステムに異常が起こり、自分自身の体を「異物」と誤認して攻撃してしまう病気を「自己免疫疾患」と呼びます。
なぜ起きるのか?
明確な原因はまだ分かっていませんが、以下のような要因が複雑に関係していると考えられています。
- 遺伝的な体質
- ウイルスや細菌感染
- ホルモンの変化(特に女性ホルモン)
- ストレスや環境変化
2. リウマチとは?(関節リウマチ)
関節リウマチ(RA)は、自己免疫疾患のひとつで、関節の内側にある「滑膜(かつまく)」という組織が炎症を起こすことで、痛み・腫れ・関節の変形が進む病気です。
主な症状
- 朝のこわばり(30分以上続く)
- 手や足の関節が左右対称に腫れる
- 疲れやすい、微熱が続く
- 関節の変形
発症年齢と性差
- 30〜50代での発症が多い
- 日本国内の患者数は80~100万人程度
- 女性に多く、男性の約4倍
3. 自己免疫疾患の主な種類と特徴
病名 | 主な症状 | 特徴・影響する部位 |
---|---|---|
関節リウマチ(RA) | 関節の腫れ・痛み・変形 | 手足の関節から全身に進行する可能性あり |
全身性エリテマトーデス(SLE) | 発熱、皮膚症状、腎障害 | 若い女性に多く、全身に症状が出る |
シェーグレン症候群 | 目・口の乾燥、疲労感 | 涙腺や唾液腺の破壊による乾燥症状 |
強皮症(全身性硬化症) | 皮膚の硬化、内臓障害 | 手指のこわばりや肺線維化が進む場合も |
多発性筋炎/皮膚筋炎 | 筋肉の脱力、皮膚の紅斑 | 首・肩・太ももなどの筋力低下が特徴 |
クローン病・潰瘍性大腸炎 | 腹痛・下痢・血便 | 消化管の慢性的炎症(腸の自己免疫) |
4. 治療の基本方針
自己免疫疾患の治療の目的は、「免疫の暴走を抑えること」と「炎症による症状や進行を止めること」です。
主な治療法
① 薬物療法(基本)
- 抗リウマチ薬(DMARDs)
→ 炎症や免疫反応を長期的に抑える薬。メトトレキサート(MTX)など。 - 生物学的製剤・JAK阻害薬
→ 特定の免疫物質(サイトカイン)に直接作用。点滴または注射で投与。エンブレル、アクテムラ、オルミエントなど。 - ステロイド(副腎皮質ホルモン)
→ 強力な抗炎症作用。ただし長期使用には注意。 - NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
→ 痛みや熱を抑える対症療法。例:ロキソニン、セレコックス。
② 補完療法(サポート)
- 運動療法(リハビリ)
- 栄養指導・サプリメント
- 幹細胞治療、セクレトーム療法など
5. 治療薬の副作用と注意点
薬の効果を得るには、副作用とのバランスが重要です。以下に代表的な副作用をまとめます。
薬剤 | 主な副作用 | 注意点 |
---|---|---|
メトトレキサート(MTX) | 肝機能障害、口内炎、骨髄抑制 | 定期的な血液検査が必要 |
生物学的製剤 | 感染症リスクの増加(肺炎など) | 予防接種や感染予防が重要 |
ステロイド | 骨粗しょう症、高血糖、むくみ | 長期使用は最低限に抑える |
NSAIDs | 胃腸障害、腎機能障害 | 胃薬と併用、腎機能チェック |
6. 日常生活で気をつけたいこと
- 感染症対策
- 過度な疲労・ストレスの回避
- バランスの良い食事:抗酸化食材・ビタミンD・オメガ3など
- 適度な運動:体力低下・関節拘縮の予防
- 禁煙・節酒
7. 近年注目の先端治療
幹細胞治療(再生医療)
若く健康な臍帯由来幹細胞(MSC)を点滴し、炎症の制御・組織修復を促します。自己免疫疾患への応用も研究が進んでいます。
セクレトーム療法
幹細胞が分泌する成分(成長因子・エクソソームなど)を使用し、免疫バランスや組織修復を支援する治療。
まとめ
- 自己免疫疾患は、体の免疫が自分を攻撃する病気
- 関節リウマチを含め、全身に様々な影響を与える病気が多い
- 現代では薬物治療が主流であり、副作用と上手に付き合うことが大切
- 幹細胞治療などの先端医療も選択肢に入りつつある
- 医師とよく相談し、生活習慣と治療のバランスをとることが重要