原因不明、完治は難しいといわれる関節リウマチ、その治療法は

「微熱が出て関節が痛いから風邪だと思って病院を受診したら関節リウマチと診断された」

「関節リウマチって治るの?」

「何だか最近朝起きると手が動きづらい、関節リウマチだったらどうしよう」

このようにお考えの方もいらっしゃると思います。本記事では、関節リウマチと診断された場合の治療法にスポットを当てて説明していきます。

関節リウマチ治療の基本

関節リウマチの治療の基本は、病気の進行を抑えることと、できる限り痛みや腫れを取り除き、日常生活に支障が出ないようにすることです。

症状や進行度合いに合わせ、薬物療法、手術療法、リハビリテーションなどが行われます。

薬物療法

関節リウマチは紀元前からある病気ですが、はっきりとした原因がわかっていません。しかし多くの研究によって診断マニュアルや治療ガイドラインが完成し、現代では患者のQOL、生活の質は大きく向上しています。

古代ギリシャや中国では柳の樹皮を煎じて飲むと痛みがとれるとされていました。これは柳に含まれるサリチル酸に炎症や痛みを和らげる効果があるからで、それをもとに1899年にアスピリンが作られました。続いて1948年にステロイドが開発され、抗炎症効果は飛躍的に進化します。しかし、対症療法でしかないため根本的な治療とはなりませんでした。

1980年代になり、メトトレキサート、商品名リウマトレックスという薬がアメリカで登場しました。この薬は関節の破壊の進行を予防する効果があり、日本でも1999年に抗リウマチ薬として承認されます。

これによりリウマチはついに「寛解する」病気になりました。

服用方法は初日から2日目にかけて12時間間隔で3回経口投与し、残り5日間は休薬します。毎日服用する薬剤ではありません。

また、自己注射型のメトトレキサートであるメトジェクトが2022年から発売され、ニーズにあった製剤の選択が可能となりました。経口投与で吐き気などが出る場合には、週1回の自己注射に切り替えることでこのような症状を避けることができます。

抗リウマチ薬には他にも日本で開発されたブシラミンタクロリムスなどがありますが、いずれも効果が発現するまでに1~2ヶ月を要します。メトトレキサートの治療効果は他の抗リウマチ薬に比較して速やかで、投与2週目で発現する場合も少なくありません。その後3〜6か月間に渡り、その効果が増強します。

初めて関節リウマチの治療を開始した患者のうち、半分かそれ以上の方はこの薬だけで十分なコントロールが得られることが多いです。メトトレキサートを使用しているのにも関わらず、十分な活動性のコントロールができない場合、生物学的製剤JAK阻害薬を追加することになります。

様々な研究によって、関節リウマチではサイトカインとよばれる免疫に関わる物質が通常よりも増加し、関節に炎症を起こし破壊を進行させることがわかりました。

通常、サイトカインは自己の抗体と相互作用し、免疫細胞に情報を伝達する役割をしていますが、増加すると関節に炎症を引き起こし、最終的に骨を破壊することが分かっています。

生物学的製剤はこれまでの一般的な内服薬と異なり、生物の細胞から産生されるタンパク質を利用して作られた治療薬で、注射や点滴で投与され、抗体の形によく似た構造をしています。

ある特定の物質にくっついて、その物質の働きを抑えたり、阻害したりする薬であり、関節リウマチの治療に用いられる生物学的製剤はサイトカインを限定的に阻害する抗体であり、関節リウマチの患者に投与されると、サイトカインをブロックして治療効果を発揮します。

アバタセプトを除く生物学的製剤は、「抗サイトカイン治療薬」と言い換えることができます。

日本では2003年にインフリキシマブ、商品名レミケードという薬が承認されました。インフリキシマブはメトトレキサートと併用が必須になります。副作用が出やすいなどの理由でメトトレキサートが使用できない方はインフリキシマブも使用できません。

現在では8種類の生物学的製剤が使用可能で、投与法、投与間隔、抑えるサイトカインや細胞の種類などにそれぞれ特徴があり選択する際に考慮します。多くの種類は効果が出るまでに1ヶ月〜2ヶ月かかりますが、インフリキシマブは早い方だと数日以内に効果を実感でき、14週以内には効果を得られたかどうかの判定ができます。14週以内に全く効果が発現しない場合には投与量の調整が可能であり、この投与量調整が自在なことが最大の特徴であり長所でもあります。

また、生物学的製剤の中で最も歴史が古いため安全性に関するデータが豊富なことから、関節リウマチ以外にも潰瘍性大腸炎、ベーチェット病、クローン病などにも適応があります。

生物学的製剤と併用は感染症リスクを高める可能性があるため原則として推奨されていませんが、JAK阻害薬という治療薬の選択肢も存在します。JAK阻害薬のJAKとはヤヌスキナーゼ(Janus kinase:JAK)という酵素の略語で、この酵素の働きを阻害するお薬をJAK阻害薬と総称します。

生物学的製剤との違いは、生物学的製剤はそれぞれの薬剤が1種類のサイトカインに特化してブロックすることに対し、JAK阻害薬は複数の種類のサイトカインに対してサイトカインの受容体をブロックする薬です。

原因となる物質を阻害するのが生物学的製剤で、原因となる物質の通り道を遮断するのがJAK阻害薬と考えるとわかりやすいと思います。日本では2013年にトファシチニブが承認され、その後7種類が追加され計8種類が使用可能です。

  • トファシチニブ(商品名ゼルヤンツ)
  • バリシチニブ(商品名オルミエント)
  • ペフィシチニブ(商品名スマイラフ)
  • ウパダシチニブ(商品名リンヴォック)
  • フィルゴチニブ(商品名ジセレカ)

8種類のうちこの5種類が関節リウマチに適応があります。

また、生物学的製剤は皮下注射もしくは点滴で投与されるのに対し、JAK阻害薬は内服薬です。いずれも、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬単体での治療では効果が不十分な場合に使用されます。

安全性の観点

抗リウマチ薬、生物学的製剤、JAK阻害薬のいずれも副作用が発生するリスクはあります。いずれも免疫力を低下させる薬のため、風邪、インフルエンザ、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。また、心臓、腎臓、肝臓などの病気がすでにある場合には使用に注意が必要です。

また妊娠中及び妊娠を希望される場合にも注意が必要です。女性だけでなく男性が薬を使用している場合にも、一部の薬剤は妊娠3ヶ月以上前から中止することが推奨されています。妊娠を希望される場合は、必ず主治医に相談してください。

生物学的製剤の場合には注射で投与するため、注射部位に赤みやかゆみなどのアレルギー反応が出たり、点滴時の発熱や皮疹がみられることがあります。

特に日本人では帯状疱疹の発症リスクが高いとされ、過去に帯状疱疹を発症したことがある患者や高齢の患者さんでは帯状疱疹ワクチンでの予防が推奨されています。

手術療法

関節リウマチの薬物療法は研究が続けられている分野で、日進月歩で進化しています。

しかし、薬の効果や症状には個人差があり、関節の破壊が進行し機能が大きく低下してしまった場合には手術が検討されることがあります。

手術には主に滑膜切除術と機能再建手術があり、痛みを取り除くことと、骨や関節、腱などの機能を取り戻す目的で行われます。

・滑膜切除術

滑膜切除術は炎症の起きている滑膜を切除するもので、手術後数年間は炎症を抑えることができます。最近では内視鏡下手術が主流です。ただし滑膜は再生するため、あまり行われなくなりました。

・人工関節置換術

病変部の関節を取り除き、人工のものと置き換えます。痛みの除去と可動域の改善が期待できます。

・関節固定術、関節形成術

関節破壊が進んだ骨と骨を金属のプレートやネジで固定したり、骨の一部を削って形を整え鋼線で固定し矯正することで、痛みが取れ歩行などが可能になることがあります。

・腱固定術

炎症が原因で腱が切れてしまった場合、残っている腱と切れた腱をつなぎ合わせるまたはほかの箇所から移植することで腱を作り直します。再び切れることを予防するため、関節形成術を同時に行います。

いずれの手術後も薬物療法やリハビリテーションが必要です。

リハビリテーション

リハビリテーション治療はリウマチの時期により異なり、運動療法、理学療法、作業療法、補助具を使った療法などがあり、筋力増強、関節の動きの維持、破壊された関節の修復、失われた機能の代償などを目的として実施します。

リウマチ体操は運動療法の基本で、関節が固まることを予防する効果があります。

理学療法は水や温熱、光、超音波などの刺激を利用し、痛みを和らげたり、血液の循環をよくする療法です。もっとも多く利用されるのが温熱療法で、パラフィン浴やホットパックが代表的です。手の変形に対する装具、膝の装具、靴などを作製することもあります。

治療費について

一般的に、関節リウマチの治療費は高い傾向にあります。生物学的製剤によって治療を行う場合、保険利用時の3割負担で年間約50万円かかるという試算も出ています。高額療養費制度や高額療養費貸付制度などを利用することも検討しましょう。

さいごに

関節リウマチと診断された場合、治療は薬物療法から始まります。もしも薬が非常に効いて、全く関節症状が無く、半年から1年程度経過した場合には減量も考慮されますが、再燃した場合に以前の用量よりも大量の薬が必要になるケースもありますので、慎重に減量や中止の判断が必要です。間違っても、自身で勝手に中止したり、減量したりしないようにしてください。どうしても飲みづらい場合や続けられないと思った場合は医師にご相談ください。他の薬剤に変更できる可能性があります。

また、感染症にかからないためにうがい、手洗い、マスクの使用による予防や、適度な運動による免疫の活性化などが推奨されますが、いずれも現在の状態を把握し今何をすればいいかを医師と相談の上検討することが必要です。

研究が進み様々な薬が出ても、一番大事なことは早期発見・早期治療です。気になる症状がある場合には、早めの受診を心がけましょう。

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