健康診断の結果、何かの検査値が高いといわれた場合、その検査値が関係する病気が疑われます。健康診断で抗核抗体が高い、陽性といわれた場合、どうすればよいのでしょうか。
抗核抗体とは
抗核抗体は、一部の膠原病における陽性率が高いため、膠原病が疑われるときにまず最初に検査される自己抗体の総称です。
おたふくかぜやはしかなどのウイルスや細菌に感染した場合、体内で抗体がつくられます。二度目はかからない病気があるのはこの抗体がそれ専用の抵抗力を持つからです。
人間の身体には自分自身に対しては抗体ができないような仕組みがあります。これは自分の身体を自分の一部と判断して免疫の対象から除外していることによります。膠原病では自分の身体を自身と判断できず、自分の細胞の核に対して抗体が産生されてしまいます。その産生された自己抗体を抗核抗体といい、膠原病の原因のひとつと考えられています。
抗核抗体は細胞の核にあるタンパク質を攻撃します。
タンパク質は核の中にあり、核は細胞の中にあるため、通常は免疫系から見えません。
細胞は絶えず体内で動いており、その間に細胞の核の内容物が免疫系に一時的に見えてしまうことがあります。免疫系が核タンパク質を見たときに何をするかというと、核タンパク質に対する抗体を作ろうとします。通常、免疫系は核タンパク質を長時間見ることができないため、データ不足で多くは抗体を作ることができません。
例えるなら、宇宙のどこかの星に人間がいて地球を定点から観測していたとして、地球は地軸を中心に回っているので日本は1日1回しか見えません。しかし、何らかの理由で地球の自転が止まり、定点観測の範囲に日本があれば、じっくり観察した上で精密な日本地図を作ることが出来るでしょう。免疫系が核の内容物を長期間にわたって見ることができれば、抗体を作るデータが十分に得られてしまい、抗核抗体が大量に生産される可能性があります。少量生産される程度なら通常の範囲ですが、大量に出来ると健康な細胞を攻撃する可能性があります。
抗核抗体が陽性なら膠原病なの?
膠原病が疑われるときにする検査ですので、陽性であれば診断には近づきます。
しかし、健康な方でも20%程度の方は陽性となります。抗核抗体には様々な種類があり、体内にあったとしても無害なものでも陽性反応はみられます。膠原病にもまた様々な種類があり、それぞれの病気に結びつく抗核抗体があります。膠原病の中には抗核抗体検査で陰性となるものも存在するため、抗核抗体検査が陽性イコール膠原病確定ではないということになります。
抗核抗体検査は基準値の40倍未満までが陰性、それ以上が陽性です。40倍の次の基準が80倍、160倍と2倍ずつとなっていて、健康な方でも160倍以上の陽性率が出る割合が5%ほどあります。従って、320倍以上が出てはじめて、より膠原病である可能性が高いとされています。
抗核抗体が陽性と診断されたら
抗核抗体が陽性であっても、すぐに病気が発症するとは限りません。しかし、以下のような症状がある場合は、自己免疫疾患の可能性があるため注意が必要です。
- レイノー現象 寒さやストレスにより手足の血管が収縮し、血流が一時的に低下する現象です。指先が白くなり、
その後紫や赤に変化します。膠原病の症状のひとつです。 - 関節の痛みや腫れ
- 長引く発熱
- 皮膚の発疹
- 口や目の乾燥(ドライマウス・ドライアイ)
膠原病と確定するまでには、抗核抗体検査の値が陽性かつ飛び抜けて高く、何らかの膠原病が疑われる自覚症状があり、さらなる精密検査を実施して異常がある場合にようやく判断されます。気になる症状があれば、一度医師に相談してみましょう。