「糖尿病」と聞くと、血糖値が高い病気、甘いものを控えなければいけない病気、というイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし実際の糖尿病は、単に血糖値だけの問題ではなく、体全体の代謝や血管、炎症、免疫のバランスまで深く関わる病気です。
近年、この糖尿病に対して幹細胞治療という新しい選択肢が注目されるようになってきました。
なぜいま、糖尿病と幹細胞が結びついて語られるのでしょうか。
その背景を理解するためには、まず糖尿病そのものを正しく知る必要があります。
糖尿病の基本的な仕組み
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなってしまう状態を指します。
血糖は本来、食事によって体に取り込まれ、インスリンというホルモンの働きによって細胞の中へ運ばれ、エネルギーとして使われます。
しかし、何らかの理由でインスリンが十分に働かなくなると、血糖は細胞に取り込まれず、血液中にあふれてしまいます。
これが糖尿病の基本的な状態です。
糖尿病は大きく分けて1型と2型に分類されますが、日本人の糖尿病患者さんの多くを占めるのが2型糖尿病です。
2型糖尿病と生活習慣病の関係
2型糖尿病は、遺伝的な要因に加えて、食生活・運動習慣・睡眠・ストレスなど、日々の生活習慣が深く関係するタイプの糖尿病です。
そのため、2型糖尿病は生活習慣病の代表的な疾患として扱われています。
特に大きな影響を与えるのが肥満です。
体脂肪が増えると、脂肪細胞から炎症性物質が分泌され、インスリンの働きを邪魔するようになります。
その結果、体はインスリンを分泌しているにもかかわらず、うまく血糖を下げられないインスリン抵抗性という状態に陥ります。
2型糖尿病は「インスリンが足りない病気」というより、インスリンが効きにくくなってしまった病気という側面がとても大きいのです。
糖尿病は血糖だけの病気ではない
糖尿病の怖さは、血糖値そのものよりも、長期間にわたる高血糖が体に与える影響にあります。
高血糖の状態が続くと、血管の内側が傷つきやすくなり、全身で慢性的な炎症が起こります。
これにより、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、腎障害、神経障害、網膜症など、さまざまな合併症が引き起こされます。
つまり糖尿病は、血糖値の数字だけをコントロールすれば良い病気ではなく、血管・炎症・代謝全体のバランスが崩れた状態とも言えるのです。
血糖値が高いとなぜ「病気」になるのか
糖尿病が問題になる理由は、血糖値という数字そのものが高いからではありません。
本当の問題は、血糖値が高い状態が長く続くことにあります。
ブドウ糖(血糖)は、本来、脳や筋肉を動かすための大切なエネルギー源です。
しかし、インスリンの働きが弱くなると、血糖は細胞の中に入れず、血液中に余ったままになります。
この「余った血糖」が続くと、体の中で静かなトラブルが起こり始めます。
まず起こるのが、糖化と呼ばれる現象です。
血液中にあふれた糖が、血管や細胞のタンパク質にくっつき、AGEs(終末糖化産物)という老化物質を作り出します。
AGEsが増えると、血管はしなやかさを失い、硬くもろくなっていきます。
これは、血管が内側から傷つき、老化していく状態です。
血管は、酸素や栄養、ホルモンを全身に届ける重要な通り道です。
その血管が傷つくことで、目・腎臓・神経・心臓・脳など、さまざまな臓器に影響が広がります。
糖尿病の合併症の多くが血管トラブルとして現れるのは、高血糖が血管を壊し続ける状態だからです。
さらに、高血糖は体にとって「異常な状態」と認識されるため、免疫が常に刺激され、慢性的な炎症が起こりやすくなります。
この炎症は、インスリンの効きをさらに悪くし、血糖が下がりにくい悪循環を生み出します。
つまり糖尿病とは、単に血糖値が高い病気ではなく、血管・炎症・代謝のバランスが少しずつ壊れていく状態なのです。
だからこそ糖尿病の治療では、血糖値という結果だけを見るのではなく、血糖が上がりやすくなった体の環境そのものを整える視点が、いま強く求められているのです。
糖尿病における従来治療の考え方
糖尿病治療の基本は、長いあいだ血糖値をコントロールすることに置かれてきました。
食事療法・運動療法を土台に、必要に応じて飲み薬や注射薬、インスリン療法が組み合わされます。
これらの治療は、血糖値を下げるという点では非常に有効です。
実際、多くの人がこれらの治療によって合併症の進行を抑え、日常生活を送ることができています。
ただし、従来治療の多くは「今ある血糖値をどう下げるか」という対症療法的な考え方が中心です。
従来治療の限界と課題
現在の糖尿病治療は、「治す」治療というより「付き合う」治療に近いのが実情です。
薬やインスリンによって血糖値は下げられても、インスリン抵抗性そのものや、傷ついた血管、慢性的な炎症環境が元通りになるわけではありません。
糖尿病は、血糖値という数字だけでは測れない病気です。
なぜ糖尿病に幹細胞治療が注目されているのか
従来の治療では届きにくかった部分に目を向けるアプローチとして、近年、糖尿病の分野でも幹細胞治療が注目されるようになってきました。
幹細胞治療という言葉から、「失われた細胞を作り直す」「新しい細胞に入れ替える」といったイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし、糖尿病における幹細胞治療の中心は、細胞を置き換えることではありません。
現在行われている幹細胞治療の多くは、幹細胞を投与することで、体の中の環境に変化を起こす治療です。
幹細胞治療によって体の中では、過剰な炎症が落ち着いたり、免疫のバランスが整う方向へ働いたり、血管や組織の修復を助ける環境がつくられると考えられています。
これらの変化は、糖尿病の背景にある慢性炎症・血管障害・代謝環境の乱れと重なります。
幹細胞治療は、血糖値を直接下げる治療ではありません。
それでも血糖値が安定しやすくなる人がいるのは、血糖という結果ではなく、その結果を生み出している体の状態に変化が起こるからです。
この治療によって期待されているのは、インスリンの量を増やすことではなく、インスリンが働きやすい環境へと体を近づけていくことです。
つまり幹細胞治療は、糖尿病を消す治療ではなく、糖尿病が進みにくい体の状態を目指す治療だと捉えることができます。
「炎症・免疫・血管」という3つの視点
糖尿病の背景には、血糖値の問題だけでなく、炎症、免疫、血管といった複数の要素が複雑に関わっています。
幹細胞治療は、これらを個別に治す治療ではありませんが、体の環境全体に働きかけることで、結果として影響を及ぼす可能性があります。
炎症の視点では、糖尿病では軽い炎症が長く続く状態が問題になります。
幹細胞治療によって、体が過剰に反応し続ける状態が落ち着くことで、血糖が上がりやすい環境が和らぐと考えられています。
免疫の視点では、免疫が攻撃的になりすぎず、必要なときにだけ働くバランスが重要です。
幹細胞治療は、免疫の働きを強めるというより、行き過ぎた反応にブレーキをかける方向に働くとされています。
血管の視点では、高血糖や炎症によって傷ついた血管の環境が、代謝や臓器の働きに大きく影響します。
幹細胞治療は、血管そのものを作り替えるわけではありませんが、血管が回復しやすい状態へと体を整える可能性があります。
これら3つは別々の問題ではなく、互いに影響し合っています。
炎症が強まれば免疫が乱れ、血管が傷つき、結果として血糖が下がりにくくなります。
幹細胞治療が注目されているのは、こうした連鎖の一部を直接断ち切るのではなく、連鎖が起こりにくい体の環境へと近づけるという考え方にあります。
「治る」と誤解されやすい理由
幹細胞治療について調べていると、「糖尿病が治った」「インスリンが不要になった」といった表現を目にすることがあります。
これを見ると、幹細胞治療=糖尿病が治る治療、という印象を持ってしまうかもしれません。
しかし現時点で、幹細胞治療は糖尿病を完全に治す治療ではありません。
それでも「治ったように感じる人」がいるのには、理由があります。
幹細胞治療によって、体の炎症が落ち着いたり、血管や代謝の環境が改善したりすると、
結果として血糖値が安定しやすくなったり、薬の量が減ったりするケースがあります。
この変化は、患者さん自身にとっては非常に大きな体感の違いです。
そのため、「症状が出なくなった=治った」と感じやすくなるのです。
ただし、これは病気そのものが消えたわけではなく、糖尿病が表に出にくい状態になっていると考えるほうが自然です。
生活習慣が元に戻ったり、体の環境が再び乱れたりすれば、血糖値が再び上がる可能性もあります。
幹細胞治療は、「治す」「治らない」という二択で考える治療ではありません。
病気と付き合いやすい状態をつくることを目指す治療だと理解することが大切です。
この違いを正しく知っておくことが、過剰な期待や誤解を防ぎ、治療を冷静に判断するための土台になります。
まとめ
糖尿病は、血糖値が高いという数字だけを見て判断できる病気ではありません。
その背景には、インスリンの効きにくさ、慢性的な炎症、血管のダメージなど、体の環境全体の乱れがあります。
高血糖の状態が続くことで、血管は静かに傷つき、全身の臓器に影響が広がっていきます。
糖尿病の合併症が多岐にわたるのは、血糖値そのものではなく、高血糖が体の土台を壊し続ける状態が問題だからです。
従来の治療は、血糖値を下げるという点で多くの人を支えてきました。
一方で、血糖が上がりやすくなった体の環境そのものを立て直す治療は、これまで限られていました。
その流れの中で注目されているのが、幹細胞治療という新しいアプローチです。
幹細胞治療は、糖尿病を魔法のように治す治療ではありませんが、炎症や血管、免疫バランスといった根本的な環境に目を向けるという点で、これまでとは異なる視点を提供しています。
糖尿病とどう向き合うかは、人それぞれです。
大切なのは、治療法の名前だけで判断するのではなく、自分の体で何が起きているのかを知り、納得したうえで選択することです。
血糖値の数字の奥にある「体の状態」に目を向けること。
それが、これからの糖尿病治療を考えるうえでの、大きなヒントになるのではないでしょうか。
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