股関節の痛みの原因は?変形性股関節症のチェックポイントと治療法

「歩くと股関節が痛い」「立ち上がるときにズキッとする」「長く歩けない」こうした症状が続いていたら、もしかすると変形性股関節症かもしれません。股関節は体重を支えるとても大きな関節で、日常動作のほとんどに関わっています。そのため、痛みが出ると生活の質が大きく下がってしまいます。変形性股関節症は進行していく病気ですが、適切な治療によって痛みを抑え、関節の機能を保ちながら生活を続けることができます。この記事では、治療方法を中心に、症状やコントロールの仕方について解説します。

変形性股関節症とは

変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接触れ合うことで痛みや動かしにくさが出る病気です。本来、軟骨は関節のクッションとして働き、衝撃を吸収しています。しかし、加齢や負担の蓄積、体のゆがみなどが影響し、軟骨が傷つくと炎症が起こり痛みが生じます。

特に日本では臼蓋形成不全(股関節の受け皿が浅い形)が原因となるケースが多く、若い頃には症状がなくても、40〜50代で痛みが出始めることがあります。

臼蓋形成不全が多い背景には、日本人特有の骨格の傾向があります。特に女性に多く、生まれつき股関節の受け皿(臼蓋)が浅かったり、角度がやや不十分な状態で成長することが原因とされています。幼少期にはほとんど症状がありませんが、大人になると立ち仕事・育児・家事などで股関節に負担が重なり、徐々に軟骨にストレスがかかりやすくなります。

また、体質的に股関節がやわらかい(関節がゆるめ)方、内股やX脚の傾向がある方、片側に体重をかける姿勢がクセになっている方

は、より負担が集中しやすくなります。こうした骨格や姿勢の特徴を持つ方は、臼蓋形成不全がもともと軽度であっても、変形性股関節症につながりやすいといわれています。

日本では変形性股関節症の約6割が臼蓋形成不全に関連するとされており、股関節の形の違いが発症リスクに大きく関係します。自覚症状がなくても、若い頃から「長時間歩くと太ももの付け根が重い」「立ち上がるときにズキッと痛む」などのサインがある場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。

進行度は初期 → 進行期 → 末期に分類され、それぞれの段階で治療の選択が変わります。

症状と痛みの出やすい場所

変形性股関節症では、痛みの出る場所によって原因や進行のヒントが分かることがあります。「どこがズキッとするか」はとても重要なサインです。

太ももの付け根(前側)の痛み

もっとも多いのが太ももの付け根のズキッとする痛みです。立ち上がる瞬間や歩き始めの一歩目は、股関節に体重の3〜5倍の負荷がかかるため、初期の変形性股関節症でよく見られる症状です。

お尻の横あたりの痛み

股関節を支える中殿筋が疲れたり働きにくくなると、お尻の横が痛むことがあります。歩くときのバランスの崩れや姿勢のクセが関連し、股関節の変形とセットで現れやすい痛みです。

太ももの前側・外側に広がる痛み

股関節の痛みは関連痛として太もも全体に広がることがあります。一見すると筋肉のハリのようでも、根本の原因は股関節というケースが少なくありません。

お尻の深部や腰の横の痛み

お尻の奥がズーンと痛むときは、梨状筋症候群や腰の神経の影響が関わることもあります。股関節の痛みと間違えやすいため、診察では「どこが痛いか」を細かく伝えることが大切です。

こうした痛みの場所は、股関節周りの状態を把握する手がかりになります。「いつ・どこが・どんなふうに痛いか」を医療者に伝えることで、より正確な診断につながります。

治療の目的

変形性股関節症の治療でめざすのは、大きく分けて痛みの軽減股関節の機能を保つことの2つです。股関節は歩く・立ち上がる・方向転換をするなど、毎日の動作に欠かせない関節のため、痛みを抑えることは生活の質(QOL)に直結します。

ただし重要なのは、変形性股関節症ではすり減った軟骨が自然にもとに戻るわけではないという点です。そのため医学的な意味での“完治”は難しい病気とされています。しかし、これは「ずっと痛みが続く」という意味ではありません。実際には、保存療法や手術療法によって痛みをしっかり抑え、動きやすい状態を長く維持できるケースがとても多いのです。

治療では、症状の進行度や生活環境に合わせて、運動療法・体重管理・日常生活の工夫・薬物療法・手術などを組み合わせていきます。特に初期の段階では、中殿筋など股関節まわりの筋肉がしっかり働くことで、関節への負担がぐっと減り、痛みが出にくくなることもあります。これは、筋肉が股関節を“外側から補強してくれている”ためです。

進行して手術が必要になったとしても、人工股関節置換術などの治療では痛みが大きく改善し、「もっと早く相談すればよかった」と感じる方も少なくありません。治療の目的は、単に痛みを取るだけではなく、日常生活を快適に送り、自分らしい生活を続けていくための力を取り戻すことにあります。

治療方法

変形性股関節症の治療は、症状の進行度・軟骨の残り具合・年齢・生活スタイルによって大きく変わります。治療の中心となるのは保存療法(手術しない治療)と手術療法の2つで、どちらも「痛みの軽減」と「関節の機能を守る」ことを目的としています。

ここでは、それぞれの治療について深く掘り下げ、どんなケースでどの治療が向いているのかを詳しく解説します。

保存療法(手術をしない治療)

保存療法は、変形の程度が軽い段階だけでなく、進行期でも痛みを抑えるために役立ちます。股関節は体を支える大きな関節のため、周囲の筋肉・体重管理・生活動作の工夫が大きく影響します。

運動療法(中殿筋を中心に鍛える)

股関節の痛み改善で最も重要と言われるのが中殿筋(ちゅうでんきん)の強化です。中殿筋は骨盤を横から支える筋肉で、ここが弱いと歩くときに骨盤が左右に揺れ、股関節に大きな負担がかかります。

中殿筋がしっかり働くと、歩行が安定し、軟骨への圧力も減り、痛みが大幅に改善されることもあります。

  • 横向きで足を上げる運動(サイドレッグレイズ)
  • 立位で片足を横に開く運動
  • 水中歩行(水の浮力で負担少なめ)
  • ストレッチ(お尻・前もも・股関節)

運動療法は「正しくやれば痛みが減る」ケースがとても多く、初期〜中期では保存療法の中心になります。

体重管理(股関節の負荷を減らす)

股関節は、歩くだけで体重の 3〜5倍の負荷がかかると言われています。つまり、体重が2㎏増えると股関節には6〜10㎏の負担が増える計算になります。

そのため、適正体重に近づけるだけで痛みが改善する方も多く、特に保存療法の効果を高めるためにはとても大切なポイントです。

日常生活の工夫

股関節への負担は日常動作にも大きく左右されます。特に「片脚へ体重を載せるクセ」は痛みを悪化させやすいので注意が必要です。

  • 片足重心で立ち続けない
  • 重い荷物を片側だけで持たない
  • 正座・あぐらは短時間に
  • 階段は手すりを使ってゆっくりと
  • 立ち上がる時は足を軽く開いて体を支える

生活動作の見直しだけで痛みの出方が変わることがあり、保存療法の効果を底上げする重要な部分です。

薬物療法

痛みが強いときには薬が補助として使われます。

  • NSAIDs(抗炎症薬)…炎症と痛みを抑える
  • アセトアミノフェン…比較的胃にやさしい痛み止め
  • ヒアルロン酸注射…滑りをよくするが、効果は個人による

薬だけで治すことはできませんが、運動療法と組み合わせることで痛みを抑えやすくなります。

装具療法(股関節サポーター)

股関節を外側から安定させるタイプのサポーターは、歩行時の痛みを軽減することがあります。特に「歩き始めが痛い方」には有効なことがあります。

手術療法(症状が強い場合の治療)

保存療法で痛みがコントロールできない場合や、関節の変形が進んでいる場合には手術が検討されます。手術は決して最後の手段ではなく、「痛みを根本から改善し、生活の質を大きく向上させるための治療」です。

人工股関節置換術(THA)

変形した関節を人工関節に置き換える手術で、世界中で広く行われています。痛みの改善効果が非常に高く、術後の満足度も高い治療です。

  • 強い痛みが続く
  • X線で軟骨がほとんど残っていない
  • 日常生活に大きな支障がある

人工関節の寿命は10〜20年と言われていますが、最近では材質の改良によりさらに長持ちしやすい傾向があります。

骨切り術(寛骨臼回転骨切り術:RAO)

臼蓋形成不全が原因の場合、股関節の受け皿の角度を変えて負担を減らす手術が選ばれることがあります。自分の関節を温存できるのが特徴で、比較的若い患者に適応されることが多いです。

関節鏡手術

軟骨の傷や骨棘(こつきょく:骨のトゲ)を削る、傷の少ない手術です。初期の段階で痛みの原因がピンポイントの場合に検討されます。

手術後のリハビリ

手術後はリハビリがとても重要です。人工股関節の場合、数日で歩行練習が始まり、1〜3か月で日常生活に戻る方が多いです。骨切り術は回復に時間がかかりますが、長期的に関節を温存できるメリットがあります。

保存療法と手術療法の選び方

「どちらの治療を選ぶべきか」は、個人によって大きく異なります。年齢や生活スタイル、関節の状態など、複数の視点から判断することが大切です。

  • 年齢…40代以下は骨切り術を検討することがあります。50代後半〜は人工股関節が選ばれる傾向が強いです。
  • 症状の強さ…強い痛みが続く場合は手術によって生活の質が大きく改善することがあります。
  • 軟骨の残り具合…初期〜中期で軟骨がある程度残っている場合は、保存療法で改善する可能性があります。
  • 生活スタイル…立ち仕事・育児・スポーツの有無などによって適した治療が変わります。
  • X線やCTの結果…臼蓋形成不全や関節の変形のタイプによって治療方針が変わります。

大切なのは、「痛みを我慢し続ける必要はない」ということです。治療の選択肢は複数あり、どれも日常生活の質を高めるための手段です。

まとめ

変形性股関節症は、進行とともに痛みや動きにくさが強くなる病気ですが、適切な治療を行うことで痛みを大きく減らし、日常生活を快適に続けていくことができます。保存療法では筋力強化や生活動作の工夫が効果を発揮し、進行した場合でも手術療法によって痛みが改善し、歩行が安定するケースが多く見られます。

大切なのは、「痛みを我慢し続ける必要はない」ということです。股関節の痛みは日常の何気ない動作にも影響しますが、治療の選択肢はひとつではありません。生活スタイルや症状に合わせて方法を選ぶことで、より自分らしい過ごし方を取り戻すことができます。

違和感や痛みが続くときは、ひとりで抱え込まず、早めに専門家へ相談してください。早期の判断と適切なケアが、これからの生活の質を大きく左右します。

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