シェーグレン症候群という言葉を聞いたことがありますか?
目や口が乾く、コンタクトが合わないーそんな何気ない不調の裏に、この病気が潜んでいることがあります。涙や唾液が極端に出にくくなることで、生活のさまざまな場面で不便や違和感が生じやすくなる自己免疫疾患のひとつです。
「なんだか乾くな」「疲れやすい気がする」など、最初は小さなサインから始まるため気づきにくいのが特徴です。しかし、適切なケアと治療を行うことで症状を和らげながら日常生活を続けていくことができます。
シェーグレン症候群とは
シェーグレン症候群は、免疫が自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患です。特に涙腺や唾液腺などの外分泌腺に炎症が起き、涙や唾液の分泌が減少します。
涙腺や唾液腺が強く影響を受けるため目と口の乾燥が中心ですが、関節痛、皮膚の乾燥、慢性的な疲労など全身に症状が広がることもあります。他の自己免疫疾患(関節リウマチや橋本病など)と併発しやすいのも特徴です。
なお、この病名はスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンに由来します。涙や唾液が出にくい患者を体系的にまとめた最初の医師です。
主な症状
代表的なのは乾燥症状ですが、実際には全身症状も現れる病気です。
目の症状(ドライアイ)
- 目が乾燥してゴロゴロします。
- 光がまぶしく感じます。
- コンタクトが合わなくなることがあります。
- 角膜に傷がつきやすくなります。
口の症状(ドライマウス)
- 口が乾燥し、食べ物が飲み込みにくくなります。
- 虫歯や口臭が増えやすくなります。
- 夜間、のどの乾燥で目が覚めることがあります。
味を感じるには食べ物の成分が唾液に溶ける必要があります。唾液が少ないと味が薄く感じたり、美味しさが分かりにくくなったりすることがあります。つまり唾液は味覚にも重要な役割を持っています。
全身症状
- 関節痛や筋肉痛があります。
- 慢性的な疲労や倦怠感があります。
- 手足のしびれが生じることがあります。
- 皮膚が乾燥し、かゆみが出ることがあります。
どうやって診断するの?検査とその流れ
症状だけでは判断できないため、検査を組み合わせて診断します。自己免疫が原因かどうかを総合的に評価します。
血液検査
- 抗SSA抗体・抗SSB抗体の有無を調べます。
- 炎症や免疫異常の指標も確認します。
抗SSA抗体はシェーグレン症候群でよく見られる抗体で、抗SSB抗体はより特異性が高く診断の信頼度を高める指標になります。
ドライアイ検査
- シルマー試験(涙の量を測定)を行います。
- 目の表面の傷の有無をチェックします。
ドライマウス検査
- 唾液量の測定をします。
- 小唾液腺生検で炎症の有無を調べることがあります。
これらを総合して診断されます。初期段階では経過観察を行い、必要に応じて再検査することもあります。
原因と発症のメカニズム
原因ははっきり分かっていませんが、遺伝 × ホルモン × 環境が関係していると考えられています。
なぜ涙腺と唾液腺が狙われるの?
涙腺や唾液腺は外から細菌やウイルスが侵入しやすいため、もともと免疫細胞が多く配置されています。警戒態勢が高い場所に、自己抗体(抗SSA抗体・抗SSB抗体)が関与することで、免疫が誤って攻撃を強めてしまい、炎症が続いて涙や唾液が出にくくなります。
さらに、これらの腺には自己抗体の標的となるタンパク質が豊富に存在し、ウイルス感染やホルモンの変化などの影響も受けやすいことが分かっています。このような要因が重なることで、涙腺・唾液腺が特に障害されやすいと考えられています。
どんな人がなりやすい?
シェーグレン症候群は誰にでも起こりうる病気ですが、特に次のような傾向があります。気づきにくいサインを早めにキャッチすることが大切です。
- 女性に多い(特に更年期以降)
女性ホルモンの変化が涙や唾液の分泌に影響し、乾燥症状が出やすくなります。
- 家族に自己免疫疾患がいる
遺伝的な体質が関与していると考えられています。
- 他の自己免疫疾患がある(関節リウマチ・橋本病など)
併発することが多く、注意が必要です。
- ウイルス感染の既往(EBウイルスなど)
感染をきっかけに免疫が誤反応することがあります。
- 口や目の乾燥が長く続いている
「年齢のせい」「疲れのせい」と思っていた乾燥が、実はサインのこともあります。
これらが当てはまるからといって必ず発症するわけではありませんが、不調が続く場合は、ひとりで抱えずに専門家へ相談してみましょう。
治療の目的
根治の難しい病気のため、症状を和らげて生活の質(QOL)を保つことが治療の中心です。乾燥症状を放置すると角膜炎や虫歯に進む可能性があるため、早めにケアを始めることが大切です。
治療方法
治療は乾燥対策と免疫調整を柱に行います。
目の乾燥への治療(ドライアイ)
- 人工涙液・ヒアルロン酸点眼を使用します。
- 涙点プラグ(涙の出口を塞ぐ処置)を行うことがあります。
- 加湿やまばたきの意識で乾燥を防ぎます。
涙には水分だけでなく、蒸発を防ぐ油の層、目の表面に密着させるムチン層があり3層構造になっています。シェーグレン症候群では水分の層が不足しやすいだけでなく、ムチン層の質が低下して涙が広がりにくくなることがあります。
また「涙が少ないのに出口を塞ぐの?」と思うかもしれませんが、涙は量だけでなく、どれだけ長く目にとどまれるかがとても重要です。涙点プラグは涙の排出口を塞ぐことで、涙が長く目に留まり、乾燥を防ぐ効果が期待できます。
口の乾燥への治療(ドライマウス)
- 口腔保湿ジェルやスプレーを使用します。
- 唾液分泌を促す薬(セビメリン/ピロカルピン)を使います。
- 虫歯予防のためフッ素塗布を行います。
唾液には食べかすを洗い流し、酸を中和して歯を守り、自ら歯を修復する再石灰化の働きがあります。また、食べ物の成分を溶かして舌に届けるため、唾液が少ないと味覚が低下したり、虫歯が増えやすくなったりします。そのため、フッ素で歯を強くしながら唾液を補う対策が大切です。
全身症状への対処
- NSAIDsで関節痛に対処します。
- 皮膚の乾燥には保湿剤を使用します。
- 疲労感には休息や生活リズムの調整が役立ちます。
免疫異常に対する治療
炎症が強い場合や内臓に影響が出る場合に検討します。
- ステロイド薬で炎症を抑えます。
- 免疫抑制薬(メトトレキサート等)を使用することがあります。
- 重い例では生物学的製剤を使用することがあります。
シェーグレン症候群は指定難病
シェーグレン症候群は国の指定難病に含まれており、医療費の助成を受けられる制度があります。長期的な治療が必要な患者さんの負担を減らすための仕組みです。
医療費助成の申請は、お住まいの地域を管轄する保健所で行います。必要な書類や手続きについては、医療機関や保健所と相談しながら進めていきましょう。
日常生活でできる工夫
- こまめな水分補給を心がけます。
- 加湿器で室内の湿度を整えます。
- サングラスで光の刺激を軽減します。
- 口腔ケアを丁寧に行い虫歯を防ぎます。
- ストレスをためすぎないよう生活を整えます。
まとめ
シェーグレン症候群は乾燥症状を中心に全身に影響することがありますが、治療と工夫によって日常生活を続けることができます。不安をひとりで抱えず、気になる症状があるときは専門家へ相談してみましょう。
日々のちょっとした違和感が、体からの大事なサインであることもあります。気づいたときに行動することが、未来のあなたを守る一歩になります。
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