「最近よく耳にするバセドウ病って、どんな病気なの?」
甲状腺ホルモンが関係する病気の中でも代表的なものがバセドウ病です。
体の代謝を司るホルモンが過剰に分泌されることで、全身のさまざまな機能に影響を及ぼします。
ここでは、原因・症状・治療法を中心に、医療的な観点から解説していきます。
バセドウ病とは?
バセドウ病とは、甲状腺が活発に働きすぎて甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
甲状腺は首の前側・のどぼとけの下あたりにある小さな臓器で、蝶のような形をしています。
ここから分泌される甲状腺ホルモン(T3・T4)は、体のエネルギー代謝・体温調整・心臓や筋肉の働きなどをコントロールしており、まさに全身の代謝スイッチのような役割を果たしています。
このホルモンが過剰に分泌されると、体が常にエンジンをふかしているような状態になり、
心拍数の上昇・発汗の増加・体重減少など、全身のさまざまな症状が現れます。
バセドウ病は自己免疫疾患の一種で、
体の免疫が誤って自分自身の甲状腺を刺激し、ホルモンを作りすぎてしまうことが原因です。
このとき作られるTSH受容体抗体(TRAb)が、甲状腺を常に働かせてしまいます。
甲状腺が休むことなく動き続けることで、心臓や代謝への負担が大きくなり、全身が疲れやすくなるのです。
バセドウ病の「バセドウ」の由来
バセドウ病(Basedow’s disease)という名前は、19世紀のドイツの内科医カール・アドルフ・フォン・バセドウ(Carl Adolph von Basedow)に由来します。
彼は1840年ごろ、動悸・眼球突出・甲状腺の腫れという3つの特徴的な症状を組み合わせて、初めてひとつの病気として報告しました。
それ以前にも同じような症状を示す患者は存在していましたが、バセドウ医師が初めて体系的に整理し、独立した疾患として医学的に確立したことから、この病名がつけられました。
一方で、同じ時期にアイルランドの医師ロバート・グレーブス(Robert Graves)も、ほぼ同じ症状を持つ患者を報告しており、
そのため英語圏では「グレーブス病(Graves’ disease)」と呼ばれています。
つまり、バセドウ病とグレーブス病は同じ疾患を指す言葉であり、
国や医学史の背景によって名称が異なるだけなのです。
日本では、医学の発展においてドイツ医学の影響が強かったことから、「バセドウ病」という名称が定着しました。
このように、病名の背景には医学の歴史や文化の流れが深く関係しています。
現代においては、どちらの呼び方も使われますが、いずれも甲状腺ホルモンが過剰に分泌される同じ病気を意味しています。
主な症状
甲状腺ホルモンが多く分泌されると、全身の代謝が異常に高まり、以下のような症状が現れます。
- 動悸や息切れが起こる
- 手の震えや発汗の増加
- 食欲があるのに体重が減る
- 疲労感・不眠・いらいらなど精神的な不安定さ
- 眼球突出(目が飛び出したように見える)
特に眼球突出は、バセドウ病に特徴的な症状のひとつで、
甲状腺に対する自己免疫反応が目の周囲の組織にも影響を及ぼすことで起こります。
原因と仕組み
まず理解しておきたいのは、甲状腺は常に働いている臓器だということです。
ただし、いつも全力で動いているわけではなく、脳からの指令によって働く強さが調整されています。
脳の下垂体はTSH(甲状腺刺激ホルモン)というホルモンを分泌し、
そのTSHが甲状腺に「もう少しホルモンを作って」と指令を出します。
逆にホルモンが十分なときにはTSHの分泌を減らし、エネルギーのバランスを保っています。
つまり、甲状腺は常に活動しながらも、脳と連携して出力を自動調整しているのです。
ところが、バセドウ病ではこの仕組みに異常が起こります。
本来は下垂体が出すTSHによって制御されるはずの甲状腺が、
TSH受容体に似た抗体(TRAb)に刺激され、
脳のブレーキが効かないままホルモンを過剰に作り続けてしまうのです。
その結果、体の代謝が過剰に高まり、動悸・発汗・体重減少などの症状が現れます。
このように、バセドウ病は免疫の誤作動によって甲状腺が暴走する病気といえます。
治療方法
バセドウ病の治療は、過剰になったホルモンの働きを抑えることが目的です。
症状や年齢、再発リスクに応じて次の方法が選ばれます。
- 薬物療法:
抗甲状腺薬(メルカゾール・プロパジールなど)を使用して、甲状腺ホルモンの合成を抑えます。
服薬により多くの方が数か月〜数年でホルモン値が安定します。
- 放射性ヨウ素治療:
放射性ヨウ素を服用し、甲状腺の細胞を穏やかに抑制してホルモン産生を減らす方法です。
副作用が少なく、再発リスクが低いのが特徴です。
- 手術療法:
甲状腺を一部またはほとんど切除し、ホルモンの分泌量を減らす治療です。
重度の腫れや薬・放射線が合わない方に適応されます。
治療後はホルモン値を定期的に検査し、再発や副作用を早期に確認することが大切です。
バセドウ病は難病?
バセドウ病は指定難病ではありません。
治療法が確立しており、適切な管理でコントロールできる病気です。
発症率は女性が男性の約5〜10倍とされ、30〜40代に多くみられます。
自己免疫疾患ではありますが、早期に治療を開始すれば日常生活を維持しながらのコントロールが可能です。
一時的に甲状腺ホルモンが高い状態が続いても、しっかり治療すれば多くの方が改善します。
まとめ
バセドウ病は、体の免疫が誤って甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
動悸や手の震え、体重減少などの症状がみられますが、薬や放射性ヨウ素治療などで十分にコントロール可能です。
難病ではなく、正しい知識と継続的な治療により、
多くの方が健康的な生活を送ることができます。
気になる症状がある方は、早めに内分泌内科を受診しましょう。
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