アトピー性皮膚炎は、かゆみや湿疹を繰り返す慢性的な皮膚の炎症性疾患です。外用薬や内服薬、生物学的製剤など治療の選択肢は増えていますが、それでも「症状が安定しない」「再発を繰り返す」と悩む人は少なくありません。
こうした背景の中で、近年幹細胞治療という新しいアプローチが、アトピー性皮膚炎との関係で注目されるようになってきました。
この記事では、アトピー性皮膚炎に対して幹細胞治療がどのような考え方で用いられているのか、そして現時点で分かっている効果や限界について解説していきます。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹を繰り返す、慢性的な皮膚の炎症性疾患です。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、長期間にわたって付き合っていく必要がある病気として知られています。
特徴的なのは、皮膚のバリア機能が弱くなっていることと、免疫が過剰に反応しやすい状態が重なっている点です。外からの刺激やアレルゲンが皮膚に入り込みやすくなり、それに対して免疫が強く反応することで、炎症やかゆみが起こります。
この免疫の反応は、本来体を守るための仕組みですが、アトピー性皮膚炎では必要以上に働いてしまいます。その結果、炎症が慢性化し、皮膚の赤みや湿疹、強いかゆみが続く状態になります。
また、かゆみによって皮膚を掻くことでバリア機能がさらに壊れ、炎症が悪化するという悪循環が起こりやすいことも、アトピー性皮膚炎の大きな特徴です。
このようにアトピー性皮膚炎は、単なる皮膚のトラブルではなく、皮膚のバリア機能と免疫・炎症のバランスが崩れた状態として捉える必要があります。
アトピー性皮膚炎は「炎症と免疫の病気」
アトピー性皮膚炎では、皮膚の表面だけでなく、体の内側でも免疫の働きが乱れていると考えられています。
免疫が過剰に反応すると、炎症を引き起こす物質が多く放出され、皮膚の赤みやかゆみが続きやすくなります。この状態が長く続くことで、皮膚は常に刺激を受けやすい状態になります。
その結果、症状が落ち着いたように見えても、少しの刺激で再び悪化するという状態を繰り返しやすくなります。
アトピー性皮膚炎における幹細胞治療
アトピー性皮膚炎に対する幹細胞治療は、皮膚そのものを作り直す治療ではありません。注目されているのは、幹細胞がもつ免疫や炎症のバランスを整える働きです。
アトピー性皮膚炎では、免疫が過剰に反応し、炎症が長く続きやすい状態にあります。この炎症が皮膚のバリア機能をさらに弱め、症状の悪化や再発を繰り返す原因になります。
研究や臨床報告では、間葉系幹細胞(MSC)が、こうした過剰な免疫反応を穏やかにし、炎症性物質の産生を抑える方向に働く可能性が示唆されています。
この作用は、かゆみや湿疹を直接抑え込むものではなく、炎症が起こりにくい状態へ体の環境を近づけていくという考え方に基づいています。
そのため、幹細胞治療は「症状を消す治療」というより、アトピー性皮膚炎と長く付き合っていく中で、症状が安定しやすい土台を整える治療として位置づけられています。
幹細胞治療と幹細胞培養上清の違い
アトピー性皮膚炎に対する再生医療の文脈では、「幹細胞治療」と「幹細胞培養上清」が並んで語られることがありますが、両者は同じものではありません。
幹細胞治療は、生きた幹細胞そのものを体に投与し、その細胞が体内で分泌する物質や周囲との相互作用によって変化を促す治療です。
一方、幹細胞培養上清は、幹細胞を培養した際に細胞が分泌した成分のみを取り出したもので、成長因子やサイトカイン、エクソソームなどが含まれます。治療では細胞そのものは使用されません。
つまり、幹細胞治療が「細胞ごと用いる治療」だとすれば、幹細胞培養上清は幹細胞が外に出した成分の働きを利用する治療と考えることができます。
どちらも免疫や炎症のバランスに働きかける可能性が研究されていますが、作用の仕方や安全性、治療に対する考え方は異なります。その違いを理解したうえで、どの治療が自分の目的に合っているのかを考えることが大切です。
報告されている効果と改善例
海外を中心とした研究や臨床報告では、幹細胞治療によって、かゆみの軽減や湿疹の範囲の縮小などが見られたケースが報告されています。
症状の評価指標(EASIやSCORADなど)において、治療後に数値の改善が認められた例もあり、特に炎症の落ち着きや掻破行動の減少が変化として挙げられることが多いようです。
ただし、すべての人に同じような改善が見られるわけではなく、効果の現れ方や持続期間には個人差があるとされています。
培養上清やエクソソームとの関係
幹細胞治療との違いを理解したうえで、次に整理しておきたいのが、幹細胞培養上清やエクソソームとの関係です。
幹細胞培養上清とは、幹細胞を培養する過程で、細胞が外に分泌した成分を含む液体のことを指します。この中には、成長因子やサイトカイン、エクソソームなど、免疫や炎症、組織環境に関わるさまざまな成分が含まれています。
治療に用いられるのは、これらの分泌された成分のみであり、生きた細胞そのものは体に入れません。そのため、幹細胞治療とは異なるアプローチとして位置づけられています。
アトピー性皮膚炎との関係では、培養上清やエクソソームが、皮膚の炎症環境や免疫バランス、バリア機能の状態に間接的に働きかける可能性が研究段階で示唆されています。
これは、症状を即座に抑える治療ではなく、炎症が起こりにくい状態を保ちやすくするという考え方に近いアプローチです。
幹細胞治療と同様に、培養上清やエクソソームを用いた方法も、すべての人に同じ効果が期待できるわけではありません。症状の程度や体質、治療の目的によって、向き・不向きが分かれる点を理解しておくことが大切です。
現時点での限界と注意点
幹細胞治療は、アトピー性皮膚炎を完全に治す治療ではありません。
現時点では、大規模な臨床試験が十分に行われている段階とは言えず、標準治療として確立されているわけではありません。
また、症状の重症度や体質、生活環境によって反応は大きく異なります。そのため、「必ず効く」「誰でも改善する」といった期待の持ち方は適切ではありません。
幹細胞治療を検討する場合は、現在行っている標準治療を否定するのではなく、補助的な選択肢のひとつとして位置づける視点が大切です。
まとめ
アトピー性皮膚炎に対する幹細胞治療は、免疫や炎症のバランスに働きかけるという点で、従来とは異なる考え方に基づく治療です。
症状を直接抑え込むのではなく、炎症が起こりにくい体の環境を整えることで、結果として症状の安定を目指すアプローチと言えます。
一方で、効果や安全性についてはまだ研究段階の側面も多く、過度な期待は禁物です。治療を検討する際は、仕組みや限界について十分な説明を受け、自分の症状や目的に合っているかを冷静に考えることが重要です。
幹細胞治療は、アトピー性皮膚炎と向き合うための新しい選択肢のひとつとして、今後の研究の進展が注目されています。
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