バセドウ病とは?動悸・手の震え・体重変化からわかる症状と治療をやさしく解説

バセドウ病という名前を聞いたことはあっても、「どんな症状が出る病気なのか」「どうやって治療するのか」までは、意外と知られていません。動悸や手の震え、体重の変化、目の違和感など、日常の体調不良として見過ごされやすい症状が重なるため、気づくまでに時間がかかることもあります。

しかしバセドウ病は、原因や治療方法がわかっている病気です。この記事では、症状を中心に、原因や治療方法までを解説していきます。

バセドウ病とは

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気です。甲状腺は首の前側にある小さな臓器ですが、全身の代謝やエネルギー消費をコントロールする重要な役割を担っています。

本来、甲状腺ホルモンには「出しすぎないように調整する仕組み」があります。脳(下垂体)から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)が、甲状腺の働きをコントロールするブレーキ役です。

しかしバセドウ病では、免疫の異常によってTSHの代わりに甲状腺を刺激し続ける自己抗体が作られてしまいます。その結果、ブレーキが効かない状態となり、甲状腺ホルモンが必要以上に分泌され、体が常にフル回転してしまうのです。

甲状腺ホルモンによるフル回転状態が続くと、体はエネルギーを使いすぎてしまい、少しずつバランスを崩していきます。動悸や体重減少、疲れやすさ、気持ちの不安定さといった症状は、体が「頑張りすぎている」サインとして現れるものです。バセドウ病は、元気になりすぎる病気ではなく、体が休めなくなり、消耗してしまう病気だといえます。

この病気の名前は、19世紀にこの病気を報告したドイツの医師「カール・アドルフ・フォン・バセドウ」に由来しています。バセドウ医師は、動悸や体重減少、目の症状といった一見別々に見える症状が、同じ病気として起こっていることを明らかにしました。

実はこの病気は、国によって呼び名が異なるという特徴があります。日本やドイツでは「バセドウ病」と呼ばれていますが、英語圏では、同じ病気を報告したイギリスの医師グレーブスの名前から、グレーブス病と呼ばれています。

呼び方は違っても、指している病気は同じであり、

名前の違いは発見の歴史によるものです。

バセドウ病は、決してまれな病気ではありません。日本ではおよそ500〜1000人に1人前後が発症するとされており、、決して珍しくない病気です。特に女性に多くみられますが、男性や子どもでも発症することがあります。

バセドウ病の原因

バセドウ病の原因は、自己免疫の異常です。

本来は体を守るはずの免疫が、誤って甲状腺を刺激してしまうことで、甲状腺ホルモンが過剰に作られるようになります。

このとき関与するのが、TSH受容体抗体と呼ばれる自己抗体です。本来、甲状腺の働きは脳から分泌されるTSHによって調整されていますが、バセドウ病では、この抗体がTSHの代わりとなって甲状腺を刺激し続けてしまいます。

その結果、体はアクセルを踏みっぱなしでブレーキが効かない状態となり、甲状腺ホルモンが必要以上に分泌され、全身が常にフル回転してしまいます。エネルギーを使いすぎた体は次第に消耗し、動悸や体重減少、疲れやすさ、気持ちの不安定さといった不調として症状が現れるようになります。

バセドウ病の治療では、こうした状態を放置せず、暴走しているアクセルを適切に緩め、体のバランスを取り戻すことが重要になります。

なお、なぜ免疫がこのような誤作動を起こすのかは、

まだ完全にはわかっていません。ただし、発症には遺伝的な体質に加えて、ストレス、出産、感染症などが引き金として重なることがあると考えられています。

バセドウ病の主な症状

バセドウ病の症状は、甲状腺ホルモンが多くなりすぎることで、体の働きが過剰になることで現れます。

  • 動悸・息切れ
  • 手の震え
  • 汗をかきやすい
  • 暑がりになる
  • 体重が減る(食べているのに痩せる)
  • 疲れやすい
  • イライラしやすい、不安感がある
  • 下痢やお腹の不調

これらの症状は、ひとつひとつを見るとよくある体調不良に見えることも多く、気づかれにくいのが特徴です。

ここまで読んで、

「当てはまるものがいくつかあるかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。

ただし、すべての症状がそろっていても、バセドウ病であると決まるわけではありません。症状の出方や強さ、組み合わせは、人によって大きく異なります。

体調の変化は、必ずしも分かりやすい形で現れるとは限りません。

「なんとなくいつもと違う」「前と比べておかしい気がする」

そんな感覚も、体からの大切なサインのひとつです。

こうした症状の中でも、見た目や生活への影響が出やすく、不安を感じやすいものの一つが目の症状です。

バセドウ眼症とは?

バセドウ病では、甲状腺だけでなく、目の周囲にも炎症が起こることがあります。これをバセドウ眼症と呼びます。

バセドウ眼症は、甲状腺ホルモンの量そのものよりも、免疫の異常による炎症が関係して起こると考えられています。そのため、甲状腺の数値が落ち着いていても、目の症状だけが現れたり、後から強くなったりすることもあります。

主にみられる症状には、次のようなものがあります。

  • 目が前に出てきたように見える
  • まぶたや目の周りが腫れる
  • 目が乾く、ゴロゴロする
  • まぶしさを強く感じる
  • 涙が出やすくなる
  • 物が二重に見える

これらの症状は、見た目の変化だけでなく、日常生活に支障をきたしやすいという特徴があります。特に、目の乾きや痛み、見えにくさは、仕事や家事、外出時のストレスにつながることも少なくありません。

また、バセドウ眼症は必ずすべての人に起こるわけではありません。症状の出方や強さには個人差があり、軽い違和感だけで経過する人もいれば、治療が必要になるケースもあります。

「目が出る=すぐに重症」というわけではありませんが、

見え方の変化や違和感が続く場合には、早めに医師へ相談することが大切です。内科だけでなく、眼科と連携しながら経過をみていくことで、症状の悪化を防ぎやすくなります。

バセドウ病の治療方法

バセドウ病の治療では、過剰に分泌されている甲状腺ホルモンをコントロールすることが目的になります。

治療方法にはいくつかの選択肢があり、症状の強さや年齢、生活スタイルなどに応じて選ばれます。

1. 抗甲状腺薬による治療

もっとも一般的に行われる治療が、抗甲状腺薬による治療です。

これは飲み薬で行われ、点滴などは必要ありません。

抗甲状腺薬は、甲状腺ホルモンが作られすぎるのを抑え、

踏みっぱなしになっているアクセルをゆっくり緩める役割を持っています。

治療を始めると、動悸や手の震え、発汗などの症状は、

数週間〜数か月かけて徐々に落ち着いていくことが多くあります。

抗甲状腺薬の注意点と副作用

抗甲状腺薬は多くの方に使われている薬ですが、

まれに副作用が出ることがあります。

  • 皮膚のかゆみや発疹
  • 肝機能の異常
  • 白血球が減少する(感染症に注意が必要)

そのため、治療中は定期的な血液検査を行い、

安全に続けられているかを確認しながら進めていきます。

異変を感じた場合は、

自己判断で中止せず、早めに医師に相談することが大切です。

2. 放射性ヨウ素内用療法

抗甲状腺薬が合わない場合や、

より確実に甲状腺ホルモンを抑えたい場合に選択されるのが、放射性ヨウ素内用療法です。

「放射性」と聞くと不安に感じる方も多いかもしれませんが、

この治療は甲状腺に集まりやすいヨウ素の性質を利用したものです。

放射性ヨウ素を少量飲むことで、

働きすぎている甲状腺の細胞だけに作用し、

ホルモンの過剰分泌を抑えます。

全身に強い影響が出る治療ではなく、

余分なヨウ素は尿として体外に排出されます。

治療後は、甲状腺の働きが落ち着きすぎて甲状腺機能低下症になることもありますが、

その場合はホルモン補充療法(飲み薬)で安定した状態を保つことができます。

3. 手術による治療(甲状腺手術)

バセドウ病の治療には、甲状腺の一部または大部分を手術で取り除く方法もあります。

甲状腺はホルモンを作る工場のような臓器です。

手術では、働きすぎている工場の量そのものを減らすことで、ホルモンの過剰分泌を抑えます。

手術は、

  • 薬の効果が十分でない場合
  • 薬の副作用が強い場合
  • 甲状腺の腫れが大きい場合
  • 早く確実にコントロールしたい場合

などの場合に検討されます。

手術後は、甲状腺ホルモンが不足する場合があり、

ホルモン補充療法を行うことがあります。

これは体に必要な量を安定して補っている状態であり、

適切に調整すれば、日常生活に大きな支障が出ることは多くありません。

まとめ

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが作られすぎることで、

体が常にフル回転してしまう病気です。

動悸や手の震え、体重の変化、目の違和感など、

日常の不調として見過ごされやすい症状から始まることも少なくありません。

しかし、バセドウ病は原因がわかっており、治療の選択肢がある病気です。

抗甲状腺薬、放射性ヨウ素内用療法、手術といった治療法の中から、

今の自分に合った方法を選ぶことができます。

症状の強さよりも、

「続いているか」「重なっているか」に目を向けることが、受診のきっかけになります。

バセドウ病は、正しく知り、適切に治療を行うことで、

必要なサポートにつながりやすくなる病気です。

気になる症状がある場合は、ひとりで抱え込まず、

体の小さなサインを医師に相談してみましょう。

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