全身性エリテマトーデス(SLE)という言葉を、初めて耳にしたという方もいるかもしれません。名前だけを見ると難しそうに感じますが、SLEは免疫の働きに異常が生じることで、体のさまざまな場所に炎症が起こる病気です。
ひとつの症状だけを見ると、よくある体調不良のように感じられることもあります。しかし、いくつかの不調が重なったり、良くなったと思ったら別の場所に症状が出たりすると、「いったい何が起きているのだろう」と不安になる方も少なくありません。
この記事では、全身性エリテマトーデス(SLE)とはどのような病気なのか、症状のあらわれ方、そして治療とどのように向き合っていくのかを、できるだけ分かりやすく整理していきます。
SLE(全身性エリテマトーデス)とは
SLEは「全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)」の略で、自己免疫疾患のひとつです。自己免疫疾患とは、本来体を守るはずの免疫が、誤って自分自身の体に反応してしまう状態を指します。
SLEでは、この免疫の異常な反応によって、皮膚や関節、腎臓、肺、神経など、全身のさまざまな場所に炎症が起こる可能性があります。症状の出方や重さは人によって大きく異なり、同じ病名でも経過は一人ひとり違います。
「エリテマトーデス」という言葉は、もともと「赤くなる状態」という意味を持つ言葉です。皮膚の発疹や炎症による赤みなど、この病気でよく見られる症状の見た目から名付けられました。
また、SLEの「ループス(lupus)」はラテン語で「オオカミ」を意味し、昔の医師が顔の発疹を「オオカミに噛まれた跡のように見えた」と表現したことが由来とされています。
なお、全身性エリテマトーデス(SLE)は、日本では指定難病に指定されている病気です。これは病気の重さだけを意味するものではなく、長く治療と付き合う必要があることから、医療費や生活面での支援が用意されているという位置づけでもあります。
SLEの主な症状
SLEの症状は、体のどこに炎症が起こるかによって変わります。すべての症状が同時に現れるとは限らず、時期によって主に現れる症状が変わることも、この病気の特徴です。
皮膚・粘膜の症状
SLEでよく知られている症状のひとつが、蝶形紅斑です。両頬から鼻にかけて赤みが出る発疹で、蝶が羽を広げたような形に見えることからこの名前が付いています。
そのほかにも、日光に当たると症状が悪化しやすい日光過敏、口の中のただれ、脱毛などがみられることがあります。
関節・筋肉の症状
関節の痛みや腫れ、こわばりなどの症状が現れることがあります。朝起きたときに関節が動かしにくいと感じる人もいます。
リウマチに似た症状ですが、関節が変形しにくい点が特徴です。
全身に現れる症状
発熱、強い疲労感、だるさなど、はっきりした原因が分からない全身の不調が続くこともあります。「休んでも疲れが取れない」と感じる場合、こうした炎症が関係していることもあります。
内臓への影響
全身性エリテマトーデス(SLE)では、皮膚や関節だけでなく、内臓に炎症が及ぶこともあります。特に注意が必要なのが腎臓で、腎炎が進行すると、むくみや尿の異常として現れることがあります。
そのほか、肺や心臓、神経系に影響が出る場合もあり、症状に応じた経過観察が大切になります。
SLEの治療
全身性エリテマトーデス(SLE)の治療は、免疫の異常な働きを抑え、臓器を守ることを目的に行われます。治療の中心になるのは、薬によるコントロールです。
SLEそのものを治すために手術を行うことは、一般的にはありません。ただし、治療の過程で検査や処置、手術が必要になることがあり、そのため「SLEで手術をした」と表現されることもあります。
薬による治療が基本
SLEの治療では、症状の種類や重さに応じて、次のような薬が使われます。
- 炎症を抑えるための薬
- ステロイド薬による免疫反応のコントロール
- 免疫の働きを調整する免疫抑制薬
- 必要に応じて使われる生物学的製剤
これらの薬は、免疫の暴走を抑え、症状の悪化や臓器障害を防ぐために重要な役割を果たします。治療は「一度決めたら終わり」ではなく、症状の変化に合わせて調整されていきます。
治療方針を決めるための検査・処置
SLEでは、臓器の状態を詳しく調べるために、専門的な検査が行われることがあります。その代表例が腎生検です。
腎生検は、腎臓の組織を少量採取して調べる検査で、腎臓の炎症の程度を確認し、今後の治療方針を決めるために行われます。医学的には検査ですが、入院を伴うこともあり、本人の感覚では「腎臓の手術をした」と感じるケースも少なくありません。
合併症に対する治療と手術
SLEの炎症が強かったり、治療が間に合わなかった場合には、臓器に影響が及ぶことがあります。その際には、薬だけでなく、処置や手術が必要になることもあります。
例えば、腎臓の機能が大きく低下した場合には、将来的な透析に備えてシャント手術が行われることがあります。また、血栓ができやすくなることで、血管の治療が必要になるケースもあります。
治療の影響による手術が必要になることも
SLEの治療では、ステロイド薬を長期間使用することがあります。ステロイドは重要な薬ですが、長期使用によって骨や血流に影響が出ることがあります。
その結果、大腿骨頭壊死などが起こり、人工関節の手術が必要になることがあります。この場合、手術の対象は関節ですが、背景にはSLEの治療が関わっています。
治療と向き合うということ
SLEの治療は、薬だけで完結するものではありません。症状の変化を観察し、必要に応じて検査や処置を行いながら、長い目で体を守っていく治療です。
「手術」という言葉だけを見ると不安になるかもしれませんが、それは治療が失敗したという意味ではなく、体の状態に合わせて必要な対応が取られているということでもあります。
SLEと向き合うために
全身性エリテマトーデス(SLE)は、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。そのため、「前より悪くなった気がする」「また新しい症状が出た」と不安になることもあるかもしれません。
ですが、そうした変化は珍しいことではなく、体が発している大切なサインでもあります。症状の変化に気づき、早めに相談することが、無理のない生活につながります。
SLEは、症状を理解し、治療と上手に付き合うことで、日常生活を続けていくことができる病気です。焦らず、自分のペースで向き合っていくことが大切です。
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