ある日突然、鏡を見て「えっ?」と思い、気になりだす白髪。染めたり抜いたりされる方も多いと思います。
10代や20代で生え始める、いわゆる若白髪もあれば、
30代半ばで生え始め、寄る年波を実感しため息、なんてこともあります。
今回はそんな「白髪のすべて」について解説していきます。
髪の生える仕組み
髪は、地肌から出ている部分を毛幹、地肌の中にある部分を毛根と呼びます。
毛根の一番奥の膨らんだ部分を毛球といい、その中にある髪の元となる毛母細胞が、毛髪の成長を司る毛乳頭からの指示で分裂・増殖し、各部位に分かれさらに角化したものが毛髪です。
角化とは細胞が死んで硬くなる現象のことです。つまり毛髪は死んだ細胞ですが、根本の毛母細胞が活発に分裂・増殖することによって押し出されるように伸びていきます。1年間に10cm以上、長いものは6年以上伸び続けます。
毛根は胎児のときにつくられ、その数は生まれてから基本的に一生変わりません。
日本人の髪はなぜ黒い?
持って生まれた地毛の色は、主に髪の大部分を占めるコルテックスに存在するメラニン色素の種類と量によって決まります。
メラニン色素には、ユーメラニン(黒褐色系)とフェオメラニン(黄赤色系)があります。ユーメラニンが多くメラニンの総量が多いのが黒髪。メラニンの総量が少ないのがブロンド。そして、いずれのメラニンもほとんど含まないのが白髪です。
白髪ができる仕組み
毛球の中には毛母細胞など、様々な細胞があります。その中にメラノサイトという、メラニン色素を生成する色素細胞が存在します。
実は、産毛などを想像していただければわかりやすいかもしれませんが、生まれたての毛は全て白いのです。そこにメラノサイトが作ったメラニン色素が取り込まれ、色のついた毛髪になります。
白髪はこのメラノサイトの働きが衰えてしまう、またメラノサイトの大元である色素幹細胞の生成が阻害されたりすることで、毛髪に色をつけることができなくなり発生します。
なぜメラノサイトは衰えるの?
ひとつめは加齢です。メラノサイトは30代半ばから働きが衰えだします。これは白髪が生え始める時期と一致します。
髪の毛はヘアサイクルにより4〜6年で抜け落ちますが、抜け落ちる際にメラノサイトも同時に失われます。通常、次の髪が生える際にメラノサイトも同時に再生しますが、加齢によりメラノサイトが伴わないケースが増えてきます。
紫外線
頭皮が紫外線により刺激を受けることで、活性酸素が生成されます。
これが多く生成されると体が酸化していき、体内の細胞や遺伝子が正常に働きにくくなります。
それにより、毛母細胞の働きが悪くなり白髪の原因となることもあるのです。
遺伝
両親どちらかが若い時から白髪が多ければ、遺伝的影響が関係してくることがあります。
ただし重要なこととして、遺伝するのは「白髪が生える」という遺伝子ではなく、「白髪が生えやすくなる」という遺伝子です。
メラニン色素が生成されにくい遺伝子や、成長ホルモンの分泌量が少ない遺伝子などが引き継がれることが研究により証明されています。
精神的ストレス
ストレスによっても白髪が増えると言われており、2種類の影響が確認されています。
1つ目はストレスにより血管が収縮し、血行不良になりやすいことで起こるものです。
血行不良になると、髪の成長、白髪の抑制に必要な栄養素が毛母細胞まで届きにくくなります。
有効な対策としては、頭皮マッサージやヘッドスパが効果的です。
2つ目は、ストレスにより交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、皮脂の分泌が活発になります。
その皮脂が空気に触れ、徐々に酸化し過酸化脂質になります。
この過酸化脂質が頭皮の雑菌と混ざると、それが刺激となりフケやかゆみを誘発します。また、過酸化脂質が毛穴に詰まると、抜け毛や細毛、うねり毛の増える原因となり、加齢臭の原因となる「ノネナール」という物質を発生させることにもなります。
そして、この過酸化脂質が頭皮に増えると、メラニン色素を作り出すメラノサイトの働きが抑制され、白髪が生える原因となりうるのです。
よってこの過酸化脂質は頭皮にとって大敵であり、これを除去するには炭酸シャンプーなどを使ったスカルプクレンジングが有効な方法です。
白髪を黒髪に戻す方法はあるの?
一度白髪が生えると、同じところに黒髪は生えないという噂がありますが、実はこれは間違いです。
白髪を黒髪に戻す方法はあります。
正しい対策を行うと、次に生える髪は黒くなるかもしれません。諦めず、適切な方法を実践してみてください。
白髪を減らすには?
近年の研究でいくつか有効とされる対策が確立されてきています。
有酸素運動
運動不足で血流が悪くなるとメラニン色素を作るために必要な栄養が毛根に届きにくくなり、白髪につながります。血液の流れを良くすることで、白髪対策だけではなく健康な髪を成長させることもできるでしょう。
頭皮は毛細血管が張り巡らされていますが、血流を良くすると毛細血管の数を増やすこともできます。また、運動をすることでストレスに対抗するホルモンであるセロトニンが活性化されます。ストレスも血行不良の原因となるので、ストレス解消のためにも運動をするようにしましょう。
特に有酸素運動は、肺から取り込んだ酸素を全身にくまなく巡らせる効果が期待できます。ラジオ体操やウォーキング、ストレッチ、ジョギング、水泳など続けられそうな有酸素運動を行いましょう。
禁煙
タバコを吸う習慣のある人は、禁煙をすることで白髪を予防できる可能性があります。
タバコに含まれるニコチンは交感神経を優位にさせるため血管を収縮させ、血行を悪化させる恐れがあります。メラニン色素を作るために必要な栄養が毛根に届きにくくなり、白髪に繋がる恐れがあります。
また、ニコチンが体内から抜けることで禁断症状が起こり、ストレスから血管を収縮させることもあります。依存性が高いため、タバコを吸っていない時でも血行不良となる可能性もあるので、禁煙をする方がよいでしょう。
頭皮マッサージ
メラノサイトを活性化させメラニン色素を生成するためには栄養が必要です。頭皮をマッサージして血流を促進させ、栄養を頭皮に届けましょう。頭皮マッサージは頭部のリンパ節も刺激するため、老廃物を流して疲労回復やリラックス効果が期待できます。
食生活の見直し
白髪を減らすには糖質の取りすぎを避けるだけではなく、白髪対策に効果的な栄養素の摂取も大切です。下記の栄養が入った食材を積極的に取ることで、白髪の対策につながるでしょう。
<白髪対策に効果的な栄養素>
・タンパク質
髪の毛の90%以上は「ケラチン」というタンパク質の一種です。
ケラチンは18種類のアミノ酸から作られており、その中でも特に「Lーリジン」と「チロシン」が重要です。
Lーリジンはケラチンを作り髪の育成を促す働きや、抜け毛、集中力アップなどにも効果があります。
チロシンはメラニン色素の原料となるもののひとつです。
L ーリジンが多く含まれる食べ物
- 桜えび
- 湯葉などの大豆製品
- ゼラチン
- 豚肉、鶏肉
- チーズ
チロシンが多く含まれる食べ物
- たけのこ
- かつお節
- 納豆
- アーモンド、ピーナッツなどのナッツ類
- 牛乳
・ミネラル
ミネラルの中でも髪の成長に特に重要なのは「アルギン酸」と「亜鉛」です。
アルギン酸は海藻のぬめりを作り出している成分で、髪を保護したり、頭皮の乾燥を防いだりします。
亜鉛は髪の成長に必要なタンパク質の吸収を高める働きがあります。
アルギン酸が多く含まれる食べ物
- 昆布
- わかめ
- ひじき
- もずく
- めかぶ 他、海藻類
亜鉛が多く含まれる食べ物
- 牡蠣
- 湯葉や納豆などの大豆製品
- ゼラチン
- 豚肉、鶏肉
- チーズ
・ビタミン
ビタミンといっても多くの種類がありますが、「ビタミンC」と「パントテン酸」が髪に良いビタミンとして挙げられます。
ビタミンCは肌や髪の毛を作るために必要なコラーゲンの生成に欠かせない栄養素です。
パントテン酸は身体を作るあらゆる細胞やホルモンの合成を助ける働きのある栄養素です。
ビタミンCが多く含まれる食べ物
- 緑茶
- 焼き海苔
- アセロラ
- いちご
- キウイ
パントテン酸が多く含まれる食べ物
- 鶏レバー
- 鶏ささみ
- 卵
- 牛乳
- 魚類
白髪に関する様々な噂とは?
Q.白髪は抜くと増えるって本当?
A.嘘です。
白髪を抜いて、白髪が増えることはありません。
髪に色を付けるメラノサイトはそれぞれの毛根に存在しているため、1本抜いても他の毛には影響がないと言われています。1つの毛穴から生える毛は1本とは限らず、数本生えることもあるため、このような噂が出たのだと考えられます。
ただ、毛根自体のメラノサイトの働きが低下しているため、次に生えてくる毛が白髪な場合が「多い」という可能性はあります。そして、増えないから抜いても良いや、と抜くことも避けてください。無理やり髪の毛を抜くと毛根が傷むため、次に新しい毛が生えて来ない可能性があります。
Q.白髪が多いと薄毛になりにくいって本当?
A.嘘です。
薄毛の原因と白髪の原因には、共通するメカニズムがあります。
頭皮の血行が悪くなり、十分な栄養素が届かず頭皮や細胞が弱って健康な髪の毛が作れなくなってしまうことまでは同じです。白髪が残る方は体質やケアで薄毛のコントロールに成功した方であり、抜けてしまうことに関しては白髪も黒髪もかわりません。
Q.白髪を染めると白髪が増える?
A.対策はありますが、本当です。
白髪染めの薬剤には髪の色を変えるための化学成分が多く含まれています。
その化学成分が頭皮や髪にダメージを与え、その結果として白髪が増える可能性があります。特にジアミン系の成分が含まれる白髪染めを長期間使用することで、髪の健康を害し、白髪が増えるリスクが高まることが指摘されています。白髪染めを選ぶ際には成分をよくチェックし、髪や頭皮に優しい製品を選ぶことが大切です。
白髪が生えてくるのは仕方ないと諦めている方もおられるかもしれませんが、適切なケアをすれば黒い髪が生えてくる可能性があります。白髪の発生や増加を完全に食い止めるのは難しいですが、ケアを続ければ生えにくい状態をキープすることも可能です。自分の白髪のタイプがどれに該当するかを見極めて、健康な頭皮とキレイな髪をめざしましょう。