「免疫」という言葉はよく耳にしますが、実際にはとても複雑で繊細な仕組みを持っています。本記事では、自己免疫疾患とは何か、そして代表的な種類や症状、治療について解説していきます。
自己免疫疾患とは?
免疫は、本来であればウイルスや細菌などの「外敵」を攻撃し、私たちの体を守ってくれる大切な働きです。ところが、この免疫のシステムが何らかの理由で誤作動を起こし、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。この状態を自己免疫と呼び、その結果として現れる病気が自己免疫疾患です。
つまり、自己免疫疾患とは、「自分の体を自分で攻撃してしまう病気」なのです。原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要因や環境的なストレス、感染症、ホルモンの影響などが複雑に関わっていると考えられています。
自己免疫疾患の特徴
- 慢性的に続くことが多い:一度発症すると長期間付き合っていく必要がある病気が多いです。
- 症状が多岐にわたる:関節、皮膚、内臓など体のあらゆる場所に症状が現れることがあります。
- 女性に多い:特に20〜40代の女性に多く見られる傾向があります。
- 原因が複雑:単一の原因ではなく、複数の要因が重なって発症すると考えられています。
代表的な自己免疫疾患の種類
自己免疫疾患は数十種類以上存在します。その中でもよく知られているものを分かりやすくまとめました。
1. 関節リウマチ
関節に炎症が起こり、腫れや痛み、変形を引き起こす病気です。進行すると関節の動きが制限され、日常生活に支障をきたすこともあります。早期発見と治療がとても大切です。
2. 全身性エリテマトーデス(SLE)
全身の臓器に炎症が起こる自己免疫疾患です。皮膚に赤い発疹(蝶形紅斑)が出ることが特徴の一つで、腎臓や心臓、肺などにも障害が及ぶ場合があります。症状の出方は人によって大きく異なります。
3. 橋本病(慢性甲状腺炎)
甲状腺が攻撃されて働きが低下し、ホルモンが不足する病気です。疲れやすさ、体重増加、むくみ、気分の落ち込みなどが症状として現れます。
4. バセドウ病
こちらは橋本病とは逆に、甲状腺が過剰に働いてしまう病気です。動悸や手の震え、体重減少、汗の増加などが特徴で、眼球が突出する「眼症」が見られることもあります。
5. 1型糖尿病
膵臓のインスリンを作る細胞が免疫により壊され、インスリンが出なくなる病気です。血糖値の管理のためにインスリン注射が必要になります。
6. 多発性硬化症
脳や脊髄の神経が攻撃され、視覚障害や手足のしびれ、運動麻痺などが起こる病気です。再発と寛解を繰り返すことが特徴です。
7. 重症筋無力症
筋肉に信号を伝える仕組みが免疫により妨害され、筋力が低下する病気です。まぶたが下がる、物が二重に見える、手足の力が入りにくいなどの症状が出ます。
8. クローン病・潰瘍性大腸炎
いずれも腸に炎症が起きる自己免疫性疾患で、腹痛や下痢、血便などが長期的に続きます。日本でも患者数が増えている病気です。
自己免疫疾患の治療について
自己免疫疾患には「これで完治する」という治療法はまだ確立されていません。ただし、近年は研究が進み、症状をコントロールする治療法が増えています。
- 薬物療法:ステロイドや免疫抑制剤、生物学的製剤などが用いられます。
- 生活習慣の改善:十分な睡眠、バランスの取れた食事、ストレス管理が大切です。
- 定期的な通院:病気の進行や薬の副作用をチェックするため、医師のフォローアップが欠かせません。
自己免疫疾患は「病気と共に生きる」ことが求められるケースが多いため、無理をせず、自分の体と相談しながら日常生活を工夫していくことが大切です。
自己免疫疾患と向き合うために
自己免疫疾患と聞くと「怖い病気」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、医療の進歩によって、多くの患者さんが治療を続けながら普通の生活を送ることができています。大切なのは、早期に正しく診断を受け、適切な治療とセルフケアを取り入れることです。
もし気になる症状がある場合は、一人で抱え込まずに医療機関に相談してみてください。正しい知識を持ち、必要なサポートを受けることで、病気と前向きに向き合っていくことができます。