膠原病とは、関節リウマチをはじめ、全身性エリテマトーデス(SLE)、血管炎、筋炎、シェーグレン症候群などの難治性の慢性炎症性疾患の総称です。
膠原病は、病理学者ポール・クレンペラー(1887-1964)が1942年に提唱した比較的新しい病気の考え方です。 何世紀もの間、病気は特定の臓器が障害されて起こるとする「臓器病理学」の考えが支配的であり、病気の診断は臓器の病変に基づいて行われてきました。 クレンペラーは、全身性エリテマトーデスのように多数の臓器に同時に障害が発生し、どの臓器が病変の中心であるのかを特定する事が出来ない病気があることに気づきました。
本記事では、膠原病とは何か、自己免疫疾患との違い、その仕組み、治療方法について詳しく説明していきます。
膠原病とは?
膠原病とは、自分自身の臓器を構成する細胞やタンパク質に異常な免疫反応が起こる病気です。免疫の暴走と形容する医師もいます。免疫は本来、いったんかかった感染症にもう一度かからないように抵抗力を獲得する仕組みのことです。はしかや風しんなどはこの免疫を獲得しているため、一度かかると通常二度とかからない病気となります。
免疫や抵抗力は健康な状態であれば、外部からの病原菌や異常な細胞に対してのみ働きますが、免疫機能に異常が起こるなど何らかのきっかけで、誤って自己の組織を攻撃してしまう場合があります。これを自己免疫といい、自己免疫によって起こる病気を自己免疫疾患といいます。
膠原病はいくつかの病気の総称、と先程説明しましたが、関節リウマチ、強皮症、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎・多発性皮膚筋炎、結節性多発動脈炎の6つが古典的膠原病としてクレンペラーに定義された病気です。
近年ではシェーグレン症候群、ベーチェット病、成人スティル病、ANCA関連血管炎、混合性結合組織病、サルコイドーシスなども膠原病関連疾患として扱われることがあります。これはどの疾患も自分自身の免疫の異常によって全身の結合組織、つまり細胞や血管、筋肉などに炎症が起こることからグループとされているものです。関節に攻撃してしまうと関節リウマチ、皮膚や内臓などを攻撃してしまうと強皮症、という病名になります。
膠原病はどのような人がかかりやすい?
以前は原因不明とされていましたが、少しずつ研究が進み、一部の膠原病では遺伝的要因も考えられるようになってきました。しかし遺伝的要因だけでは発病せず、発病にはいろいろな環境因子というものが重要になります。具体的には風邪などのウイルス感染や、夏の海水浴や冬のスキー、ストレス、性別だと妊娠可能な年齢の女性に比較的多いと言われています。
膠原病の症状とは?
症状は病気の種類によって違い、同じ病気でも患者さんごとにあらわれ方、時期、強さなどが大きく異なります。
多くの病気で共通している症状は、炎症している箇所の腫れ・痛み、こわばり、発熱、紅斑や紫斑などの皮膚症状、リンパ腺の腫れ、しびれ、レイノー現象と呼ばれる寒さや冷たい水に手足をつけたときに先端の色が白く変化ししびれる徴候があります。また目や口の渇き、爪の変形、それぞれの膠原病に特徴的な名前のついた湿疹等も認められます。このような症状がある場合、専門医の診察を早めに受けることが重要です。
膠原病の診断とは?
診察により膠原病が疑われると、次に血液検査を行います。膠原病全体で陽性率が高い抗核抗体検査、また全身の病気であるためレントゲンや尿検査、各病気の因子が陽性であるかなど、確定診断のためには色々な検査が必要となってきます。
膠原病の治療の種類とは?
膠原病の種類によって治療方法は異なりますが、炎症と免疫を強力に抑えていくため、全般的には副腎皮質ホルモン、つまりステロイドを使用し、各症状の強さによって量を決定する事が多いです。通常は少し多めの薬剤量から始め、徐々に減薬していきます。膠原病の種類によっては劇的に効く例もありますが、患者さんごとに多岐にわたる症状があるため、治療経験豊富な専門医の指導が必要です。
その他にリウマチに対する抗リウマチ薬など、それぞれの膠原病の種類に対して特徴的な治療方法がありますが、最近では免疫抑制剤と呼ばれるシクロスポリン、エンドキサン、メトトレキサート、セルセプト、イミランなどの薬も使用するようになっています。絶大な効果を発揮するものもありますが、ステロイド治療ともども副作用には十分な注意が必要です。副作用がほとんどないという点からは漢方治療も注目されています。さらに今後リウマチを中心に移植や再生治療など進化した治療法が現在研究中です。
治療の目的は病気の勢いを抑え、色々な箇所に起こる障害を防ぐことです。また、症状に応じた対症療法なども行われています。
膠原病と自己免疫疾患との違い
膠原病は自己免疫疾患のうちの一種です。自己免疫疾患はヒトが持つ免疫のシステムが外部の敵ではなく自分自身の体を攻撃してしまう病気の総称で、特定の臓器を攻撃するものと、全身の様々な臓器を攻撃するものにわけられ、膠原病は全身を攻撃する全身性の自己免疫疾患に分類されます。
まとめ
膠原病は種類の多い病気であり、患者さんごとに症状や治療法はかなり異なります。今後は遺伝子や細胞レベルで一人ひとりに合わせた個別化医療が進んでいくでしょう。治療を進め寛解を目指すためには患者さんやご家族にも病気のことをよく理解していただくことが大切になります。若い女性に発症が多い全身性エリテマトーデスなどでは妊娠・出産などの問題にも直面しますが、治療を続けながらの出産も可能です。専門医と相談しながらうまく病気と付き合っていくことを考えていきましょう。