美容や健康への関心が高い方からも注目されている「再生医療」と「幹細胞治療」ですが、保険適用外の治療が多いため、どのくらいの費用がかかるか気になる方も多いでしょう。
本記事では、費用相場や、なぜ高額になることが多いのかなどをお伝えしていきます。
再生医療と幹細胞治療の基本
再生医療は、患者さんご自身の細胞などを用いてケアする医療分野の総称です。
幹細胞治療は、その中でも幹細胞(さまざまな細胞に変化する可能性を持つ細胞)を扱う治療として知られています。
再生医療の現場ではPRP療法(血小板が含まれた血漿を利用するやり方)や幹細胞治療(脂肪由来や骨髄由来などの細胞を培養して使用するアプローチ)、あるいは免疫療法(NK細胞などを扱うケース)など、いくつかの方法が選択肢として存在します。
再生医療に対する意識調査:費用面の懸念
実際に、再生医療に興味を持つ方は近年増えています。
株式会社マインドシェアによる調査では、多くの方が再生医療に期待を寄せている一方で、「費用」に関する不安を抱いている例が多くみられました。
これは、再生医療の多くが保険適用外であり、治療技術自体も高度な領域であることが背景にあると考えられています。
再生医療の種類と費用相場
再生医療と一口にいっても、採取する細胞や培養方法によって様々なケースが存在します。
以下では、日本国内での再生医療の代表的な治療法と、その費用相場を一覧表にまとめてみました。
あくまで一般的に公表されている費用例であり、医療機関や細胞培養加工施設の種類、細胞の数などで変動することがあります。
治療名 | 費用の相場 |
---|---|
自家多血小板血漿(PRP)による変形性関節症治療 | 100,000円~500,000円 |
自己脂肪由来幹細胞を用いた変形性関節症のケア | 1,000,000円~2,500,000円 |
自己脂肪由来幹細胞を用いた肝障がいへのケア | 1,000,000円~2,000,000円 |
多血小板血漿(PRP)による角膜疾患に対する組織修復 | 150,000円~200,000円 |
自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた糖尿のケア | 2,500,000円~3,500,000円 |
インプラント治療における自家多血小板血漿(PRP)を用いた口腔内の軟・硬組織の修復 | 100,000円~300,000円(※インプラント費用に含まれる場合もあり) |
自己多血小板血漿(PRP)を用いた肌のケア(しみ、しわ、たるみ、にきび跡など) | 100,000円~300,000円 |
悪性腫瘍に対する免疫細胞治療(NK細胞、γδT細胞、αβT細胞、BAK療法など) | 150,000円~2,500,000円(投与回数による) |
脂肪組織由来再生(幹)細胞 (ADRC)を用いた豊胸 | 1,500,000円~2,000,000円 |
不妊に対する自家多血小板血漿(PRP)を用いたケア | 150,000円~300,000円 |
不妊に対する自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いたケア | 1,500,000円 |
(アルツハイマー型)認知に関わる悩みに対する脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いたケア | 2,000,000円 |
自己脂肪由来間葉系幹細胞を用いたアトピー性皮ふのケア | 1,500,000円~3,000,000円 |
脂肪由来間葉系幹細胞を用いた脳卒中・脳梗塞の後遺症へのケア | 1,500,000円~2,500,000円 |
神経変性に関わる悩みに対する自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いたケア | 1,000,000円~2,000,000円 |
⾃家多⾎⼩板⾎漿(PRP)を⽤いた毛髪分野のケア | 300,000円 |
上記の通り、幹細胞治療や免疫細胞治療などでは、数十万円から数百万円単位の治療費になることが見受けられます。
費用を抑えやすいものもあれば、細胞培養を要するものは、高額になるケースが多いといえます。
費用が高額になりやすい理由
再生医療や幹細胞治療の費用が高くなる背景には、医療機関側の技術的・設備的な負担が大きいことがあげられます。
細胞培養加工施設(CPC)の設備が必要
幹細胞や免疫細胞を培養するためには、CPC(細胞培養加工施設)という厳格な基準をクリアした設備が必要になります。
無菌環境を維持する空調や、外部からの微生物混入を防ぐための構造と動線など、多くの要件が求められます。
さらに、CPCの稼働を常に管理する人材配置も欠かせません。
そのため、医療機関としても大きな投資コストがかかります。
培地や試薬、人件費などの継続コスト
細胞を育てるためには、培地や試薬といった専門の物資を継続して使用します。
高品質の培地は決して安いものではなく、さらに微生物検査や品質管理など、複数のプロセスを経ながら細胞を確保する必要があります。
また、細胞を管理・チェックする人材面のコストも見逃せません。
医療従事者や研究スタッフなど、多角的なチームによる継続的な管理が欠かせないため、全体的な費用は上昇しやすくなります。
保険適用外が多い
PRP療法など、一部保険適用が検討されているものもありますが、まだ多くの再生医療は保険外で提供されています。
このため、自費診療としてやりくりしなければならず、金額も医療機関ごとに異なることが大半です。
その結果、患者さん側には費用負担が重くのしかかる一方で、「先進的な医療を試したい」「ライフステージに合わせて新しい選択肢をとりいれたい」という方がその費用を負担して活用する、という構図になっています。
幹細胞治療の動向
ここでは、幹細胞治療に対する意識の現状や治療に対する見解をご紹介します。
再生医療を身近に感じる若い世代の動向
株式会社マインドシェアによる調査結果では、20代や30代の方々の関心が想定以上に高いことがわかりました。
これは、健康面の意識が年々高まっていることや、美容クリニックなどで幹細胞治療や再生医療に触れる機会が増えたことも影響していると考えられます。
「高齢の方が受ける特別な治療」というイメージが変わり始めており、「早めにケアへ取り組んだり、美容分野でのケアや将来の生活を考える選択肢として検討したい」という意向を持つ若年層も増えています。
ボーナスや蓄えを活用して短期的に資金をつくる方も少なくありません。
幹細胞治療の費用目安:どのくらい準備できれば受けられる?
先ほどの一覧表にも示した通り、PRP療法は数十万円から始められるケースが多く、幹細胞治療は培養工程などの事情から数百万円といった金額が想定されます。
具体的な金額はクリニックによって大きく異なり、定期的な投与を前提とするプランではさらに費用が上乗せされる場合があります。
一方で、幹細胞治療を提供するクリニックの中には、分割払い制度やローン契約に対応しているところもあるため、一時的に高額な資金が準備できなくても、相談次第では選択が広がる可能性があります。
また、治療に含まれるカウンセリング料や、検査費用などが別途必要な場合もありますので、事前にしっかり確認することがおすすめです。
将来の通院や生活全体の費用を考える
再生医療や幹細胞治療の費用は確かに大きいですが、長期的な視点で見ると、多くの方が気になる「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」を意識したデメリットやメリットも考慮されます。
早めに取り組むことで、将来的にかかるかもしれない通院回数や、別の領域の費用が軽減される見通しがあるかもしれない、と考える方もいらっしゃいます。
もちろん各個人の状況に応じて異なりますが、短期的な費用だけではなく、今後の生活や年齢を重ねる中での資金計画も意識される方は増えています。
再生医療の普及と今後の動き
研究機関や医療業界では、再生医療をさらに発展させるための取り組みが進んでいます。
- iPS細胞やES細胞といった多能性幹細胞の研究
- より簡便で低コストな細胞培養技術の開発
- 法規制や保険制度の見直し
このほか、研究開発や多方面との協力も拡大しており、将来的には費用負担が軽減されることが期待されるかもしれません。
実際に提供する際には、安全性や倫理面を十分に検討したうえでの実施が求められています。
認可を受けた医療機関でのみ行われることが基本とされていますので、もし興味をもたれた場合は、実績のある施設や、幹細胞治療に精通した医師へ相談してみるとよいでしょう。
今後は、再生医療が保険適用の範囲を広げる見通しになるかどうかにも注目が集まっています。
データが積み重なってくることで、医療費全体のバランスや社会的な意義が問われる市場になっていくでしょう。
まとめ
再生医療・幹細胞治療の特徴や費用の現状をおさらいすると、保険適用外であるため金額が大きくなりがちですが、専門の施設や技術を用いた新たな選択肢として意識される場面も増えています。
- 再生医療は保険適用されにくく、自費診療として提供される場合が多い
- 幹細胞治療や免疫細胞治療は、設備や人件費、細胞培養などのコストが高いため高額になりやすい
- PRP療法は比較的低い費用から始められるケースもある
- 若年層でも再生医療を選択肢に加える方が増加傾向にある
- 長期的な通院やライフスタイルを考慮しながら費用バランスを検討することが大切
もし再生医療や幹細胞治療に関心をお持ちでしたら、まずは認可を受けたクリニックや専門医へ相談してみることをおすすめします。