階段の上り下りや長時間の歩行に支障をきたすようになった経験はないでしょうか。
変形性膝関節症は、日本で約2,530万人が抱える身近な悩みとなっています。
本記事では、変形性膝関節症の基礎知識から、従来のヒアルロン酸治療、そして新たな選択肢として注目される細胞治療まで、具体的な治療法について解説します。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、主に加齢や過度な負荷によって膝の軟骨がすり減り、痛みや腫れ、機能障害を引き起こす慢性疾患です。
日本では約2,530万人の患者が存在し、そのうち約800万人は自覚症状を持つとされています。
初期段階では朝のこわばりや歩行時の痛みが主な症状ですが、進行すると関節の腫れや可動域の制限が顕著になります。
変形性膝関節症は進行を抑えるために早期治療が重要です。
日常生活に支障が出る前に専門医に相談を行うことが重要です。
ヒアルロン酸治療の限界
従来、変形性膝関節症の治療にはヒアルロン酸注射が多く用いられてきました。
潤滑作用や痛みの軽減効果は期待できますが、残念ながら軟骨自体の再生を促す力はありません。
そのため、進行した症状を改善するには十分な効果が得られないケースもあります。
再生医療という新たな選択肢
ヒアルロン酸治療では限界がある一方、近年注目されているのが再生医療です。
再生医療とは、患者自身の細胞を活用して組織を修復・再生し、機能の改善を図る治療法の総称です。
変形性膝関節症への再生医療は、進行度や痛みの強さなど患者ごとの状態に合わせて検討されるようになっています。
脂肪由来培養幹細胞治療
脂肪由来培養幹細胞治療は、自身の脂肪組織から幹細胞を採取し、培養・増殖させた上で膝関節に注入する方法です。
幹細胞の持つ高い組織修復・再生能が期待され、以下の点が特徴です。
- 自己脂肪組織由来のため拒絶反応が起こりにくい
- 炎症の抑制や組織修復を促進
- 軟骨再生を目指すことで関節機能改善が期待できる
多血小板血漿療法(PRP)
多血小板血漿(PRP)療法は、自己血液を遠心分離機にかけて血小板を濃縮し、その成長因子を利用して組織の回復を促す治療法です。
主な特徴は以下のとおりです。
- 自己血液を利用するため、安全性が高い
- 組織修復能力を高める因子が含まれ、炎症症状を軽減
- 他の治療との併用も検討可能
治療上の重要ポイント
実際に治療を検討する際には、早期に受診することの重要性だけでなく、保険適用外であることからくる費用面の負担や個人差による効果の違いなど、知っておきたい注意点も少なくありません。
一方で、自己組織や自己血液を用いる安全性の高さや、本格的な手術と保存療法をつなぐ役割を果たす可能性など、期待されるメリットも大きいとされています。
そこで本記事では、変形性膝関節症における再生医療の「早期治療の推奨」「注意点」「メリット」について、それぞれ詳しく解説します。
早期治療の推奨
変形性膝関節症の症状が軽度なほど、再生医療の効果を得やすいとされています。
進行が進んでしまうと、軟骨の損傷部分が大きくなり、治療効果が限定的になることがあります。
少しでも違和感や痛みを覚えたら早めに専門医に相談しましょう。
注意点
注意点として、自由診療(保険適用外)となる場合が多く、費用負担が大きい点に留意が必要です。
また、効果には個人差があるため、すべての人に同じ結果が得られるわけではありません。
さらに、長期的な成績に関してはエビデンスが十分に確立していないことも考慮すべきです。
メリット
一方、メリットとしては、主に自己組織や自己血液を用いることで安全性が高いと期待できることが挙げられます。
本格的な手術と保存療法の「橋渡し的」治療となり、運動能力や活動量の改善が見込まれる点も大きな利点です。
治療選択の考慮点
患者それぞれが抱える症状や生活背景によって、治療の選択肢は異なります。
以下の点を総合的に検討し、自身に合った治療法を選びましょう。
- 現状の症状の程度(軽症~重症の進行度)
- 手術の必要性(人工関節置換との比較)
- 費用負担(保険適用外治療を含む費用面)
- 再生医療による効果の期待値とリスク
実践的なアドバイスとまとめ
まずは、膝に痛みを感じた段階で整形外科を受診し、正確な診断を受けることが第一歩です。
初期症状であれば、保存療法(リハビリや投薬、ヒアルロン酸注射など)を中心に行うことが一般的ですが、進行具合や痛みの強さによっては、幹細胞治療やPRP療法といった再生医療を検討することも有効です。
変形性膝関節症への再生医療はまだ歴史が浅く、研究・臨床データの蓄積が進行中であり長期的なエビデンスが確立していない部分もあります。
しかし、安全性や痛みの軽減、機能改善といったメリットが報告されていますが、個人差があり、研究データも蓄積中です。
早期の予防的なケアやリハビリテーションに加えて、こうした新しい治療の情報収集を行うことで、これからの生活の質(QOL)を高める可能性があります。